「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類」とは

「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類」とは

問9 規則第2条第2項第1号ニに規定する備え付けておくべき「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類」とは、具体的にどのような内容を記載したものが必要となりますか。

 

おはようございます。今日は電子帳簿保存法について質問があるということでしたね。

 

 

おはようございます。はい、お客様から「規則第2条第2項第1号ニに規定する備え付けておくべき書類って、具体的に何を書けばいいの?」と聞かれて、正直よく分からなくて...

 

 

なるほど。「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類」のことですね。これは確かに分かりにくい表現ですが、要するに「会計ソフトをどう使って帳簿を作成しているかの手順書」のことなんです。

 

 

手順書ですか?具体的にはどんなことを書くんでしょうか?

 

 

まず大きく分けて、入出力処理の手順、日程、担当部署を明記する必要があります。例えば、先月相談に来た製造業のA社の例で説明しましょうか。

 

A社の事例

 

A社では、経理部の山田さんが仕訳入力を担当し、経理課長の鈴木さんが管理責任者として確認作業を行っています。彼らの事務手続書類には、こんな風に書かれていました。
入力担当者の役割
「仕訳データの入出力は、所定の手続を経て承認された証票書類(請求書、領収書、契約書等)に基づき、経理部の山田が行う」

 

 

なるほど、誰が入力するかを明確にするんですね。

 

 

そうです。そして重要なのが、入力のタイミングです。A社では業務別に細かく決めていました。
入力処理の日程

  • 現金・預金取引:取引日の翌営業日まで
  • 売掛金:請求書発行日の翌営業日まで
  • 仕入・外注費:検収日の翌営業日まで
  • その他の取引:関連書類確認から1週間以内

 

 

 

かなり具体的ですね。でも、なぜこんなに細かく決める必要があるんですか?

 

 

それは、税務調査で「いつ、どのような手順で帳簿が作成されたか」を説明できるようにするためです。適当に入力していたのでは、帳簿の信頼性が疑われてしまいますからね。

 

確認・訂正手続きの重要性

 

 

A社の例では、確認作業についてもこう定めていました。
入力内容の確認
「入力担当者(山田)は、仕訳データを入力した当日中に入力内容を確認し、誤りがあれば速やかに訂正する」
管理責任者の確認
「入力担当者は業務終了時に入力データをサーバーに転送し、管理責任者(鈴木課長)が翌営業日までにそのデータを確認する」

 

 

二重チェック体制になっているんですね。

 

 

その通りです。そして、もし管理責任者の確認後に間違いが見つかった場合の手続きも重要です。
事後訂正の手続き
「管理責任者の確認後に仕訳データの誤りを発見した場合、入力担当者は管理責任者の承認を得た上で訂正または削除を行う。その際、管理責任者が承認した旨の記録を必ず残す」

 

 

記録を残すというのは、具体的にはどうするんでしょうか?

 

 

例えば、A社では「訂正承認記録簿」を作成して、訂正日時、訂正内容、承認者のサインを記録しています。これも立派な証拠書類になるんです。

 

委託の場合の特例

 

 

ところで、記帳を税理士事務所に委託している場合はどうなるんでしょうか?

 

 

良い質問ですね。その場合は、これらの詳細な手続書類に代えて、委託契約書等を備え付けておけば大丈夫です。

 

 

それは楽ですね!

 

 

ただし、委託契約書にも「どのような手順で処理を行うか」について、ある程度の記載は必要です。完全に何も書かなくて良いというわけではありません。

 

実務上のポイント

 

 

最後に、実務上のポイントをお話しします。

 

 

はい、お願いします。

 

 

この書類は、形式的に作成するだけでは意味がありません。実際の業務手順と一致している必要があります。税務調査で「書類には翌日入力と書いてあるが、実際は1週間後に入力している」なんてことが発覚したら、かえって印象が悪くなってしまいます。

 

 

なるほど、実態に合わせて作成することが大切なんですね。

 

 

そうです。そして、業務手順が変わったら、この書類も更新する必要があります。常に現状と合致させておくことが重要です。

 

 

分かりました!お客様にも、まずは現在の業務手順を整理してもらってから、書類を作成するようにお伝えします。

 

 

それが一番ですね。何か不明な点があれば、いつでも相談してください。

 

 

ありがとうございました。とても勉強になりました!

【回答】

備付けを要する事務手続関係書類(規則2A一ニ)については、取扱通達4−6でこれに記載すべき事項が示されていますが、この備付けを要する事務手続関係書類に記載すべき事項のうち、入出力処理(記録事項の訂正又は削除及び追加をするための入出力処理を含みます。)の手順、日程及び担当部署などについて概要を示すと、例えば、次のような内容を記載したものが必要となります。

 

また、電子計算機処理を他の者に委託している場合には、これらの書類に代えて委託契約書等を備え付けておく必要があります。

 

※ 下記の概要(サンプル)については、こちらからダウンロードできます。

 

国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類(概要)

 

(入力担当者)
1 仕訳データ入出力は、所定の手続を経て承認された証票書類に基づき、入力担当者が行う。

 

(仕訳データの入出力処理の手順)
2 入力担当者は、次の期日までに仕訳データの入力を行う。
 (1) 現金、預金、手形に関するもの 取引日の翌日(営業日)
 (2) 売掛金に関するもの 請求書の発行日の翌日(営業日)
 (3) 仕入、外注費に関するもの 検収日の翌日(営業日)
 (4) その他の勘 定科目に関するもの 取引に関する書類を確認してから1週間以内

 

(仕訳データの入力内容の確認)
3 入力担当者は、仕訳データを入力した日に入力内容の確認を行い、入力誤りがある場合は、これを速やかに訂正する。

 

(管理責任者の確認)
4 入力担当者は、業務終了時に入力データに関するデータをサーバに転送する。管理責任者はこのデータの確認を速やかに行う。

 

(管理責任者の確認後の訂正又は削除の処理)
5 管理責任者の確認後、仕訳データに誤り等を発見した場合には、入力担当者は、管理責任者の承認を得た上でその訂正又は削除の処理を行う。

 

(訂正又は削除記録の保存)
6 5の場合は、管理責任者は訂正又は削除の処理を承認した旨の記録を残す 。

 

出所:国税庁