電磁的記録の書面への出力は画面印刷でO.K.?

電磁的記録の書面への出力は画面印刷でO.K.?

問11 電磁的記録の書面への出力に当たっては、画面印刷(いわゆるハードコピー)による方法も認められますか。

 

先生、クライアントから質問があったのですが、電磁的記録の書面への出力について、画面印刷(ハードコピー)による方法も認められるのでしょうか?

 

 

はい。画面印刷による方法も認められますよ。ただし、いくつかの要件を満たす必要があります。

 

 

要件というと、どのようなものでしょうか?

 

 

主な要件は「整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できること」です。つまり、紙の帳簿書類と同じように、きちんと整理された状態で、すぐに印刷できることが必要なんです。

 

 

「整然とした形式」というのは、具体的にはどういう意味ですか?

 

 

良い質問ですね。「整然とした形式」とは、従来の書面で作成される帳簿書類に準じた規則性を持つ形式のことです。例えば、仕訳帳であれば、日付、科目、金額が整然と並んでいる状態ですね。

 

 

なるほど。それでは、どんな場合が問題になるのでしょうか?

 

 

実は、よくある問題があります。例えば、会計ソフトの画面で横にスクロールしないと全ての項目が見えない場合を考えてみてください。

 

 

ああ、確かに。摘要欄が長くて画面からはみ出してしまうような場合ですね。

 

 

そうです。そのような記録をハードコピーで印刷すると、一つの取引が複数枚の紙に分かれて印刷されてしまうことがあります。これは「整然とした形式」には該当しません。

 

 

具体的な事例で教えていただけますか?

 

 

例えば、売掛金の管理表を考えてみましょう。画面上では以下のような項目があるとします:

  • 取引先名
  • 請求書番号
  • 請求日
  • 金額
  • 支払予定日
  • 摘要

これらの項目が画面の幅に収まらず、横スクロールが必要な場合、画面印刷すると一つの取引記録が2枚に分かれてしまう可能性があります。

 

 

それは確かに見づらいですね。一覧での確認が困難になってしまいます。

 

 

その通りです。税務調査の際に、調査官が帳簿を確認する時のことを考えてみてください。一つの取引を確認するのに、何枚もの紙をめくる必要があったら、効率的な確認ができませんよね。

 

 

確かにそうですね。では、専用の出力プログラムを使えば問題ないのでしょうか?

 

 

いえ、出力プログラムを使用した場合でも同様の要件が適用されます。つまり、プログラムを使っても、結果として一つの記録事項が複数枚に分割されるような出力では、「整然とした形式」とは言えません。

 

 

では、どのように対応すればよいのでしょうか?

 

 

いくつかの方法があります。例えば:

  1. フォントサイズの調整:印刷時にフォントを小さくして、一行に収まるようにする
  2. 出力項目の選択:重要な項目のみを選択して印刷する
  3. レイアウトの調整:印刷レイアウトを縦向きから横向きに変更する
  4. 専用の印刷機能の利用:会計ソフトの印刷機能を使って、適切な形式で出力する

 

 

 

実際のクライアントの事例はありますか?

 

 

ありますよ。先月、製造業のクライアントから相談がありました。彼らは在庫管理をExcelで行っていて、品名、品番、数量、単価、金額、保管場所、備考などの項目がありました。
画面印刷すると、一つの商品の情報が2枚に分かれてしまい、在庫の確認が非常に困難でした。そこで、印刷時は備考欄を省略し、必要に応じて別途詳細を出力するという方法を提案しました。

 

 

なるほど、工夫次第で対応できるんですね。

 

 

そうです。大切なのは、税務調査の際に調査官が効率的に内容を確認できる状態にすることです。「整然とした形式」というのは、単に見た目の問題ではなく、実務上の利便性も考慮した要件なのです。

 

 

明瞭な状態というのは、どのような点に注意すればよいでしょうか?

 

 

「明瞭な状態」については、以下の点に注意してください:

  • 文字が読みやすいこと:印刷時にかすれたり、つぶれたりしないよう、適切な解像度で出力する
  • 罫線がはっきりしていること:表の境界線が明確に見えること
  • 色の使い分けが分かること:モノクロ印刷でも区別できるような工夫をする

 

 

 

速やかに出力できるというのは、どの程度の時間を想定しているのでしょうか?

 

 

法律で具体的な時間は定められていませんが、税務調査の際に調査官が求めた時に、合理的な時間内に提供できることが重要です。システムの起動に時間がかかったり、複雑な操作が必要だったりするのは好ましくありません。

 

 

最後に、クライアントにアドバイスする際のポイントを教えてください。

 

 

以下の点を確認してもらいましょう:

  1. 事前テスト:実際に画面印刷を行い、出力結果を確認する
  2. 代替手段の準備:画面印刷がうまくいかない場合の代替手段を用意する
  3. 定期的な見直し:システムの更新などに伴い、出力方法を定期的に見直す
  4. 税務調査対応:税務調査の際の対応方法を事前に整理しておく

 

 

 

ありがとうございました。画面印刷も認められるけれど、きちんとした要件を満たす必要があるということがよく分かりました。

 

 

その通りです。電磁的記録の保存は便利ですが、いざという時に適切に対応できるよう、普段から準備しておくことが大切ですね。何か疑問があれば、いつでも相談してください。

【回答】

規則第2条第2項第2号において、電磁的記録の画面及び書面への出力は「整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができる」ことと規定されており、この場合の「整然とした形式」とは、書面により作成される場合の帳簿書類に準じた規則性を有する形式をいいます(取扱通達4−8)。

 

そのため、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できれば、画面印刷(いわゆるハードコピー)であっても、認められます。

【解説】

電磁的記録の書面への出力に当たっては、書面により作成される場合の帳簿書類に準じた規則性を有する形式になっている必要がありますが、その形式については定めがないため、画面印刷(いわゆるハードコピー)であっても要件を満たせば認められます。

 

なお、ディスプレイへの画面表示では、一の記録事項を横スクロールによって表示するような表示形式も認められるものの、当該画面のハードコピーにより書面に出力する場合で、一の記録事項が複数枚の書面に分割して出力されるような出力形式は、一覧的に確認することが困難となることから、整然とした形式に該当しないこととなります。

 

(注)出力プログラムを使用した出力においても、上記のように複数の書面に分割した形で出力される形式である場合には認められないこととなります。

 

出所:国税庁