
先生、お疲れ様です。クライアントの山田商事さんから質問があったのですが、「電磁的記録を外部記憶媒体へ保存する場合の要件はどういうものがありますか」と聞かれまして...正直、よく分からなくて。
まず基本的なことから説明しましょう。実は、外部記憶媒体に保存する場合でも、特別な要件というものはないんです。
え?特別な要件がないんですか?てっきり、USBメモリやクラウドに保存する時は、何か特別な手続きが必要なのかと思っていました。
その認識は多くの方が持たれているんですが、実際は違うんです。電子帳簿保存法では、記憶媒体の種類に関わらず、保存時に満たすべき要件は同じなんですよ。つまり、サーバーに保存しても、外付けハードディスクに保存しても、クラウドストレージに保存しても、要件は変わらないということです。
なるほど!それは知りませんでした。では、山田商事さんが現在使っているクラウドサービスでも問題ないということですね?
その通りです。電子帳簿保存法の取扱通達4-1にも明記されているのですが、「記憶媒体や保存すべき電磁的記録の種類を限定する規定がない」とされています。つまり、保存義務者が任意に選択できるということです。
任意に選択できるということは、極端な話、普通のUSBメモリでも大丈夫なんですか?
法律上は可能ですが、実務的には推奨しません。なぜなら、USBメモリは紛失リスクが高いし、データの破損も起こりやすいからです。例えば、先月対応したA社の事例では、経理担当者がUSBメモリに帳簿データを保存していたのですが、そのUSBメモリを紛失してしまい、大変なことになりました。
それは大変でしたね...。では、どんな点に注意すべきなのでしょうか?
重要なポイントは、「サーバー等で保存していた電磁的記録と外部記憶媒体に保存する電磁的記録は、当然に同一のものである必要がある」ということです。つまり、データの整合性を保つことが絶対条件なんです。
同一のものである必要がある...具体的にはどういうことでしょうか?
例えば、会計システムから出力したデータをクラウドに保存する際に、データが欠損したり、改ざんされたりしてはいけないということです。先ほどのA社の例で言うと、幸いバックアップがあったので事なきを得ましたが、もしバックアップがなかったら、元のデータと異なるデータを保存していることになってしまいます。
なるほど、データの完全性が重要なんですね。他に気をつけることはありますか?
はい、管理面での対策も重要です。具体的には「電磁的記録の保存に関する責任者を定める」ことや「管理規則を作成して備え付ける」ことが望ましいとされています。
管理規則ですか?どのような内容を盛り込むべきでしょうか?
良い質問ですね。例えば、B商事さんでは以下のような管理規則を作成しています:
なるほど。山田商事さんにもこのような管理規則の作成をお勧めした方が良いでしょうか?
そうですね。山田商事さんの規模や業務内容に合わせて、シンプルでも良いので管理規則を作成することをお勧めします。また、クラウドサービスを利用する場合は、サービス提供会社の信頼性やセキュリティ対策についても確認しておくことが重要です。
分かりました。それでは、山田商事さんには「外部記憶媒体への保存でも要件は同じだが、データの整合性確保と適切な管理が重要」ということをお伝えすれば良いでしょうか?
その通りです。加えて、「法律上は媒体の選択は自由だが、実務上は安全性と管理のしやすさを考慮して選択すべき」ということも伝えてください。技術的な要件よりも、運用面での配慮の方が実際は重要なんです。
よく理解できました。ありがとうございました。早速、山田商事さんにご説明させていただきます。
はい、何か他に質問があれば、いつでも聞いてくださいね。電子帳簿保存法は実務的な対応が重要ですから、一緒に勉強していきましょう。
記憶媒体の種類にかかわらず保存時に満たすべき 要件は同じであり、外部記憶媒体に限った要件はありません。
電子帳簿保存法では、記憶媒体や保存すべき電磁的記録を限定する規定はないことから、国税関係帳簿書類に係る電磁的記録の媒体については保存義務者が任意に選択することができることとなります(取扱通達4−1)。
また、保存時に満たすべき要件に関しても記憶媒体ごとに規定されていないことから、いずれの記憶媒体であっても同一の要件が適用されることとなります。
なお、実際のデータの保存に際しては、サーバ等で保存していた電磁的記録と外部記憶媒体に保存している電磁的記録は当然に同一のものでなければなりません。このため、必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定めるとともに、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいと考えられます。
出所:国税庁