
おはようございます。昨日、クライアントの山田商事から電子帳簿保存法の要件について質問があったんですが、少し誤解があるようでした。
おはようございます。どのような誤解でしょうか?
山田商事の経理担当者が「検索結果をディスプレイや書面に速やかに出力できれば、検索自体に時間がかかっても問題ないですよね?」と聞いてきたんです。どう思いますか?
えっと...確かに出力が速ければいいような気もしますが、何か違うのでしょうか?
いい質問ですね。実は、これは多くの方が勘違いしやすいポイントなんです。電子帳簿保存法の「速やかに出力する」という要件は、検索開始から出力完了までの一連のプロセス全体が速やかである必要があるんです。
一連のプロセス全体、ですか?
そうです。具体的に例を挙げて説明しましょう。例えば、税務調査官が「令和5年4月の売上に関する請求書を見せてください」と要求したとします。この場合、どんな流れになると思いますか?
まず検索条件を入力して、該当する書類を検索して、見つかった書類を画面に表示するか印刷する...という流れですね。
その通りです。そして法律が求める「速やかに出力する」というのは、あなたが今言った流れのすべてが速やかでなければならないということなんです。
ということは、検索に30分かかって、その後の出力が1秒で完了したとしても、全体で30分かかっているからダメということですか?
まさにその通りです!とても良い理解ですね。山田商事のケースで言えば、彼らのシステムは以下のような状況でした:
合計で約18分かかるわけですが、これは「速やかに出力する」要件を満たしていないんです。
なるほど!では、どのくらいの時間なら「速やかに」と言えるのでしょうか?
法律上明確な時間の定めはありませんが、一般的には数秒から数分程度と考えられています。税務調査の現場で調査官を長時間待たせるようでは実用的ではありませんからね。
そうですね。実際の税務調査で「ちょっと20分待ってください」なんて言えませんもんね。
そういうことです。別の例も挙げてみましょう。ABC商事という会社では、当初このようなシステムでした:
【改善前のシステム】
これでは要件を満たしません。
これも確かに時間がかかりすぎですね。
ところが、ABC商事はシステムを改善して、こうなりました:
【改善後のシステム】
全然違いますね!これなら税務調査でも問題なさそうです。
はい。重要なのは、検索開始から出力完了までの全体時間なんです。出力だけが速くても意味がないということを、しっかり理解しておいてください。
分かりました。クライアントにシステム要件を説明する際は、この点を特に強調して伝えるようにします。
そうですね。そして、もう一つ重要なことは、これは単に法的要件を満たすだけでなく、実務上の利便性にも関わるということです。経理担当者が日常業務で書類を探す際も、検索に時間がかかっていては業務効率が悪いですからね。
確かに、法律の要件と実務の効率性が一致しているということですね。
その通りです。山田商事には、システム全体の処理速度を改善するよう提案することにしましょう。出力機能だけでなく、検索機能も含めた総合的な改善が必要だということを説明します。
承知いたしました。他のクライアントにも同様の誤解がないか、確認してみます。
それは良いアイデアですね。電子帳簿保存法の要件は細かい部分で誤解されやすいので、定期的にクライアントと確認することが大切です。
検索開始から終了までも速やかにできる必要があります。
「速やかに出力する」とは、具体的には、閲覧対象データを出力するために行った電子計算機の操作の開始時点から出力時点までを速やかにできることを意味していると考えられます。
この場合、その閲覧対象データを出力するに当たり、データの抽出作業が伴うときには、まず始めに検索を行い、その結果抽出されたデータを画面及び書面に出力することから、当然にその検索を開始した時から、該当する書類が画面及び書面に出力されるまでを速やかにできなければならないと考えられます。
したがって、「速やかに出力する」とは、抽出されたデータについて速やかに出力することができるだけでなく、検索についても速やかにできることが必要であると考えられます。
なお、条件に該当する記録事項の全てが、ディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で出力される場合のほか、視認性の観点から、重複する項目等について画面及び書面への表示を省略しているときについても、記録事項をデータとして保持しているときは、「電磁的記録の記録事項を検索することができる機能」を有していると考えられます。
出所:国税庁