
お疲れ様です。今日は電子帳簿保存法について質問があるとのことでしたね。
はい、先生。クライアントの山田商事さんから「電子帳簿保存法でバックアップデータの保存は必須要件なんですか?」と質問されまして...。正直、明確に答えられませんでした。
なるほど、良い質問ですね。実は多くの事業者が誤解しているポイントでもあります。結論から言うと、バックアップデータの保存は電子帳簿保存法において法的要件ではありません。
えっ、そうなんですか?てっきり義務だと思っていました。
電子帳簿保存法の条文を見ても、バックアップデータの保存については明記されていないんです。法的に求められているのは、適切な可視性・検索性を持った電磁的記録の保存ですから。
でも、バックアップを取らなくて大丈夫なんでしょうか?データが消えてしまったら...。
そこが重要なポイントです。法的要件ではないものの、**国税庁は「バックアップデータを保存することが望ましい」**と明確に示しています。
「望ましい」ということは、推奨されているということですね。その理由は何でしょうか?
主に2つの理由があります。まず、電磁的記録は大量の記録が消滅する危険性があること。そして、経年劣化による記録状態の劣化が生じる可能性があることです。保存期間中の可視性を確保する観点から、バックアップが推奨されているんです。
なるほど。具体的にはどのようなケースで問題が起こるのでしょうか?
例えば、先月相談のあった製造業のB社では、サーバーの故障で3年分の電子帳簿データが消失してしまいました。バックアップがなかったため、税務調査で大変な苦労をされました。
それは大変でしたね...。国税庁は他にも何か推奨していることはありますか?
はい。必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定め、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいとされています。
責任者というのは、具体的にはどのような人が良いのでしょうか?
通常は経理部長や情報システム担当者など、データ管理に詳しい人材を指定することが多いですね。例えば、C商事さんでは経理部長を責任者に指定して、以下のような管理規則を作成しました。
どのような内容の管理規則だったのでしょうか?
毎日の自動バックアップ実施、月次での外部媒体への保存、年次でのクラウドストレージへの保管、そして障害時の復旧手順の明文化などを規定しました。
他のクライアントさんはどのような対応をされていますか?
規模によって様々ですね。個人事業主のD氏の場合、会計ソフトの自動バックアップ機能に加えて、月1回外付けHDDにデータをコピーする簡単な方法を採用しています。
中規模の企業だとどうでしょうか?
従業員50名のE株式会社では、社内サーバーでの日次バックアップに加え、クラウドサービスを利用した遠隔地バックアップを実施しています。
もしバックアップを怠って、データが消失した場合はどうなるのでしょうか?
法的義務違反にはなりませんが、実務上の問題が発生します。税務調査で帳簿の提示を求められた際、「データが消失しました」では通用しません。推定課税などの不利益処分を受ける可能性があります。
山田商事さんにはどのように説明すれば良いでしょうか?
まず、「バックアップデータの保存は法的義務ではありませんが、事業リスク管理の観点から強く推奨されています」と伝えてください。
具体的にはどのような対応をお勧めすれば良いでしょうか?
最低限、定期的なバックアップの実施、責任者の明確化、簡易的でも管理規則の作成をお勧めします。初期投資は必要ですが、データ消失による事業継続リスクや税務上の不利益を考えると、必要な投資と言えるでしょう。
山田商事さんの規模だと、どの程度のバックアップ体制がお勧めでしょうか?
年商5億円規模でしたね。クラウド会計ソフトの活用と、月次での外部媒体保存、そして年次でのクラウドストレージ保管の3段階体制がバランスが良いでしょう。
ありがとうございます。つまり、法的には義務ではないけれど、事業を守るためには必要な対策ということですね。
その通りです。電子帳簿保存法の趣旨を理解し、適切な管理体制を構築することが大切です。
よくわかりました。さっそく山田商事さんに提案資料を作成してみます!
バックアップデータの保存は要件となっていません。
バックアップデータの保存については法令上の要件とはなっていませんが、電磁的記録は、記録の大量消滅に対する危険性が高く、経年変化等による記録状態の劣化等が生じるおそれがあることからすれば、保存期間中の可視性の確保という観点から、バックアップデータを保存することが望まれます。
また、必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定めるとともに、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいと考えられます。
出所:国税庁