会計システムのサブシステムにあるマスターデータについて、課税期間終 了時点のもののみを保存することとしてもよいのでしょうか。

会計システムのサブシステムにあるマスターデータについて、課税期間終 了時点のもののみを保存することとしてもよいのでしょうか。

問18 会計システムのサブシステムにあるマスターデータについて、課税期間終 了時点のもののみを保存することとしてもよいのでしょうか。

 

先生、お疲れ様です。会計システムの電子帳簿保存について質問があるのですが、会計システムのサブシステムにあるマスターデータについて、課税期間終了時点のもののみを保存することとしてもよいのでしょうか?

 

それは重要な質問ですね。結論から申し上げると、課税期間終了時点のマスターデータのみの保存では不十分です。電子帳簿保存法の要件を満たしません。

 

 

そうなんですか!てっきり期末時点のデータがあれば十分だと思っていました。なぜダメなのでしょうか?

 

 

理由を具体例で説明しましょう。例えば、商品Aの単価が年度中に以下のように変動したとします。4月は単価1,000円、7月に値上げして1,100円、10月に再値上げして1,200円、そして3月末も1,200円だったとしましょう。もし3月末時点のマスターデータ(単価1,200円)のみを保存した場合、4月や7月に発生した取引記録を正しく表示できなくなってしまいます。

 

 

なるほど!4月の売上データを見た時に、数量10個×単価1,200円=12,000円と表示されてしまい、実際の10,000円と違ってしまうということですね。

 

 

その通りです。電磁的記録の保存対象となった取引記録と関連するマスターデータを全て保存する必要があるとされているのは、まさにこの理由からです。税務調査の際に、過去の取引を正確に再現できなければ問題になります。

 

 

具体的にはどのようなマスターデータを保存しなければならないのでしょうか?

 

 

主なものは商品マスターの単価履歴、消費税率の変更履歴、取引先情報の変更履歴、勘定科目の変更履歴などです。これらすべてについて、取引が発生した時点での正確な情報を再現できるよう保存する必要があります。

 

 

実際のシステム運用では、どのように対応すればよろしいでしょうか?

 

 

システム設計の段階から履歴管理機能の実装が必要です。マスターデータの変更時に、変更前のデータを削除せず、有効期間を設定して履歴として保存する機能が必要になります。また、各取引記録に対して、その時点で有効だったマスターデータを正確に関連付けられる仕組みも重要です。

 

 

弊社のシステムは大丈夫でしょうか?確認方法はありますか?

 

 

簡単なテストをしてみましょう。年度途中で単価を変更した商品について、変更前に発生した取引の詳細を表示して、その時の単価が正しく表示されるかチェックしてください。もし現在の単価が表示されてしまう場合は、システムの改修が必要です。

 

 

もしシステムが要件を満たしていない場合、どのようなリスクがありますか?

 

 

税務調査で帳簿の信頼性に疑義を持たれる可能性があります。最悪の場合、青色申告の承認取り消しや推計課税の適用リスクもあります。また、過去の取引内容の正確な把握が困難になり、内部統制の不備として指摘される可能性もあります。

 

 

現在のシステムが要件を満たしていない場合の対応方法は?

 

 

まず即座に現状のシステムでの保存可能なデータを整理し、マスターデータ変更時の手動記録を開始してください。その後、システムベンダーと改修協議を行い、要件を満たすシステムへの移行を検討する必要があります。場合によっては新システムの導入も視野に入れる必要があるでしょう。

 

 

新しいシステムを検討する際の確認事項を教えてください。

 

 

マスターデータの履歴管理機能、取引発生時点でのマスターデータとの自動関連付け機能、過去の取引データの正確な再現機能、そしてデータの検索・ソート機能は必須です。ベンダーには電子帳簿保存法への対応状況やマスターデータ履歴管理の具体的な仕様を必ず確認してください。

 

 

今日は勉強になりました。最後に要点をまとめていただけますか?

 

 

重要なポイントは、課税期間終了時点のマスターデータのみの保存は不可であること、取引記録と関連するマスターデータを全て保存する必要があること、そしてデータの真実性・可視性・検索性の確保が必須であることです。システムの履歴管理機能の確保と定期的な動作確認、そして法改正への迅速な対応が実務対応のポイントになります。

 

 

ありがとうございました。早速、弊社のシステムの確認をしてみます。

 

 

何か不明な点があれば、いつでもご相談ください。電子帳簿保存法は複雑な部分もありますが、適切に対応すれば業務効率化にもつながります。頑張ってください。

【回答】

単価などのマスターデータは、課税期間中に何度も改定されることもあることから、マスターデータと関連付けられた事項を正しく表示させるためには、電磁的記録の保存対象となった取引記録と関連するマスターデータを全て保存する必要があります。

 

出所:国税庁