磁的記録等により保存等することとした場合、会計システムのデータのみ保存しておけ

磁的記録等により保存等することとした場合、会計システムのデータのみ保存しておけ

問19 当社は各種の業務システム(販売等の個別取引データを保存)と会計システム(業務システムの集計データを保存)を連携させています。「仕訳帳」及び「総勘定元帳」を電磁的記録等により保存等することとした場合、会計システムのデータのみ保存しておけばよいでしょうか。

 

先生、お疲れ様です。クライアントの株式会社デジタル商事から電子帳簿保存について相談があります。

 

 

はい、どのような内容でしょうか?

 

 

当社では販売管理システムや在庫管理システムなど複数の業務システムがあり、それらから集計されたデータを会計システムに連携させています。電子帳簿保存法で仕訳帳と総勘定元帳を電磁的記録で保存する場合、会計システムのデータだけ保存すれば十分でしょうか?

 

 

それは重要な質問ですね。結論から申し上げると、会計システムのデータだけでは不十分です。業務システムの個別取引データも合わせて保存する必要があります。

 

 

えっ、そうなんですか?なぜでしょうか?

 

 

法人税法施行規則第54条の要件を満たすためです。仕訳帳は「全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿」、総勘定元帳は「全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿」と定められています。会計システムの集計データだけでは、この「全ての取引」という要件を満たせません。

 

 

具体的にはどのような問題が生じるのでしょうか?

 

 

例えば、販売管理システムで1日に100件の売上取引があったとします。会計システムには「売掛金100万円/売上100万円」という集計仕訳しか記録されていない場合、個別の取引先や商品別の詳細が確認できませんよね。

 

 

なるほど、それでは税務調査で個別取引の確認を求められた際に対応できませんね。

 

 

その通りです。さらに、優良な電子帳簿の要件にも影響します。過少申告加算税の軽減措置を受けるためには、規則第5条第5項の要件を満たす必要がありますが、集計データのみでは訂正・削除履歴の確保や帳簿間の相互関連性の確保ができません。

 

 

業務システムのデータ保存が難しい場合、何か代替手段はありますか?

 

 

はい、あります。販売等の個別取引が記載された売上帳などの補助簿を書面で出力・保存する方法も認められています。ただし、この場合は優良な電子帳簿の特典は受けられなくなります。

 

 

コスト面を考えると、どちらが良いでしょうか?

 

 

それは企業の規模や取引量によりますね。例えば、月間取引件数が少ない場合は書面保存でも管理可能ですが、大量の取引がある場合は電子保存の方が効率的です。また、過少申告加算税の軽減措置のメリットも考慮する必要があります。

 

 

システム改修が必要な場合、どのようなポイントに注意すべきでしょうか?

 

 

まず、データの真正性確保が重要です。タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の保持機能が必要です。次に、検索機能の充実です。取引年月日、取引金額、取引先での検索が可能でなければなりません。

 

 

実際の導入事例はありますか?

 

 

製造業のA社では、販売管理・購買管理・製造管理の各システムから会計システムへの連携を行い、全システムのデータを統合的に保存する仕組みを構築しました。初期投資は必要でしたが、税務調査対応の効率化と過少申告加算税の軽減措置により、長期的にはコスト削減効果を実現しています。

 

 

移行期間中の注意点はありますか?

 

 

電子帳簿保存の開始には事前承認が必要な場合があります。また、移行期間中は紙と電子の二重管理になる可能性があるため、運用ルールを明確にしておくことが大切です。

 

 

クライアントにはどのようにアドバイスしましょうか?

 

 

まず現在のシステム構成と取引量を詳しく把握し、電子保存のメリット・デメリットを整理して提案しましょう。特に、優良な電子帳簿の要件を満たすかどうかが重要なポイントになります。必要に応じてシステム会社との協議も提案してください。

 

 

ありがとうございます。早速、クライアントと詳細な検討を進めます。

 

 

電子帳簿保存法は複雑ですが、適切に対応すれば業務効率化と税務リスク軽減の両方を実現できます。分からないことがあれば、いつでも相談してください。

【回答】

そのようなシステムを採用している場合において「仕訳帳」及び「総勘定元帳」を電磁的記録等により保存等する とき には、原則として、 集計データが保存されている 会計システムのデータとともに 、個別取引データが保存されている 業務システムのデータを合わせて保存する必要があります。

 

なお、法第8条第4項 過少申告加算税の軽減措置 の 規定の適用を受けようとする場合には、この「仕訳帳」及び「総勘定元帳」を含む特例国税関係帳簿について全て優良な電子帳簿の要件を満たして保存等を行う必要があります。

【解説】

会計システムのデータのみを保存することとした場合、業務システムの集計データのみが保存され、販売等の個別取引データは保存されないため、結果として、保存した仕訳帳及び総勘定元帳のデータは、全ての取引を記載した帳簿とはなりません。

 

これは、法人税法施行規則第54条において、仕訳帳は「全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿」、総勘定元帳は「全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿」と規定されていることに反することになります。

 

また、優良な電子帳簿の要件を満たそうとする場合においては、集計データのみの保存では、 特例国税関係帳簿 に記録される 全ての取引に係るデータの訂正又は削除の履歴が確保できないことや、帳簿間の相互関連性が明確にならないことなどから、規則第5条第5項第1号イ及びロの要件が満たされないこととなります。

(注) 業務システムのデータを合わせて保存する方法以外に、法人税法施行規則第54条の要件を確保する方法として、業務システムのデータの保存に代えて、販売等の個別取引が記載された売上帳(補助簿等)を書面に出力して保存する方法も認められていますが、この方法による場合には、優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の適用を受けることはできません。

 

出所:国税庁