国税関係帳簿の電子計算機処理の記帳代行業者等への委託等について

国税関係帳簿の電子計算機処理の記帳代行業者等への委託等について

問20 国税関係帳簿の電子計算機処理に当たり、記帳代行業者等に委託している場合でも認められますか。また、記帳代行業者等への委託に際して、課税期間中に記帳せず、当該期間終了後にまとめて記帳することを委託し、そこで作成された電磁的記録を保存することや、保存場所を記帳代行業者の所在地にすることは認められますか。

 

先生、クライアントから「記帳代行業者に電子帳簿の処理を委託したいが、電帳法上問題ないか」という相談を受けました。委託自体は可能でしょうか?

 

 

はい、記帳代行業者への委託は認められています。電帳法の「自己が」という規定は「保存義務者の責任において」という意味で、必ずしも本人が直接処理する必要はありません。多くの中小企業が会計事務所に委託しているのと同じ考え方ですね。

 

 

なるほど。では、そのクライアントが「年度末にまとめて一括で記帳してもらえば効率的」と言っているのですが...

 

 

それは認められません。国税関係帳簿は取引が発生したら順次記録することが前提です。例えば、4月に発生した売上を翌年3月にまとめて記帳するような処理は、電帳法の趣旨に反します。

 

 

「順次記録」とは具体的にどの程度の頻度でしょうか?

 

 

「定期的」というのは通常の業務処理サイクルのことです。例えば、小売業なら日次、製造業なら週次や月次など、業種に応じた合理的なタイミングですね。一課税期間分を一括処理することは明らかに「定期的」とは言えません。

 

 

では、記帳代行業者のオフィスに帳簿データを保存してもらうのはどうでしょう?

 

 

それも認められません。保存場所は各税法で定められており、必ず納税地の事業所等に電磁的記録を出力できる設備を備え付ける必要があります。

 

 

でも、クラウド会計システムを使っている会社も多いですよね?

 

 

良い質問ですね。クラウドサービスは認められています。ただし条件があります。事業所のパソコンとサーバが通信回線で接続されており、事業所で帳簿をディスプレイや書面に速やかに出力できることが必要です。

 

 

具体的な事例で教えていただけますか?

 

 

例えば、東京の会社がfreee、マネーフォワード、TKCなどのクラウド会計システムを使用し、サーバが海外にあっても、東京の事業所でいつでも帳簿を確認・印刷できれば問題ありません。これは紙の帳簿が納税地にあるのと同様の状態だからです。

 

 

通信障害が心配な場合はどうすれば?

 

 

法令上の要件ではありませんが、バックアップデータの保存が推奨されています。例えば、月次でローカルにデータをダウンロードしておくなどの対策ですね。

 

 

まとめると、記帳代行業者への委託は可能だが、適切な記帳タイミングと保存場所の要件を満たす必要があるということですね。

 

 

その通りです。ただし、法律的には認められているとはいえ、本来は会社自身で帳簿を作成する「自計化」を進めることが重要です。自計化により、リアルタイムで経営状況を把握でき、より適時で正確な帳簿作成が可能になります。

 

 

自計化のメリットは他にもありますか?

 

 

はい。自計化により経営者が日々の数字に敏感になり、迅速な経営判断につながります。また、取引発生時に即座に記帳することで、記帳漏れや誤りも防げますね。委託する際は、代行業者と保存義務者の双方が電帳法の要件を理解し、適切な運用体制を構築することが重要です。特に中小企業では、税理士がしっかりとサポートすることが求められますね。

【回答】

会計事務所や記帳代行業者に委託することは認められますが、国税関係帳簿の作成に当たっては、書面であるか電磁的記録であるかにかかわらず、課税期間中に記帳せず当該期間終了後にまとめて記帳することを委託する方法は、認められません。

 

また、保存場所についても、各税法で定められているため、記帳代行業者の所在地にすることは認められません。

【解説】

法第4条( 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)及び第5条(国税関係帳簿書類の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等 )では、「自己が……電子計算機を使用して作成する場合には」と規定されていますが、この場合の「自己が」の意義については、「保存義務者が主体となってその責任において」という趣旨であり、電子計算機処理が必ずしも保存義務者自身によって行われる必要はなく、会計事務所や記帳代行業者に委託している場合も、これに含まれることになります(取扱通達4−3)。

 

なお、国税関係帳簿は、原則として課税期間の開始の日にこれを備え付け、取引内容をこれに順次記録し、その上で保存を開始するものですから、備付期間中は、書面で作成する場合は当該書面をその保存場所に備え付け、また、電磁的記録で作成する場合は当該電磁的記録をその保存場所に備え付けているディスプレイの画面及び書面に出力することができるようにしておく必要があります。

 

このことは、国税関係帳簿に係る電磁的記録の作成を他の者に委託している場合でも同じであり、保存義務者は、定期的にその電磁的記録の還元を受けることにより、備付期間においても、保存場所に備え付けているディスプレイの画面及び書面に出力することができるようにしておかなければならないこととなります。この場合の「定期的」とは、通常の入出力(業務処理)サイクルのことであり、一課税期間分を一括して処理するような場合は、そもそも備付期間においてディスプレイ等に出力することができないことから、これに該当しません。

 

したがって、課税期間中に記帳せず当該期間終了後にまとめて記帳することを委託する方法は認められないことになります。

 

また、保存場所については、所得税法等の各税法で定められているものであり、記帳代行業者の所在地を保存場所にすることは認められません。

 

このため、記帳代行業者等に委託する場合であっても、保存義務者の事業所等の所在地等、所得税法等の各税法で定められてい る保存場所に、国税関係帳簿に係る電磁的記録を出力することができる電子計算機やディスプレイ等を備え付けておく必要があります。

 

出所:国税庁