T 令和元年度の主な改正事項

「令和元年度の所得税の改正のあらまし」が国税庁から公表されましたね。

そうですね。

今回の改正での注目点はどこになりますか?

・住宅借入金等の所得税の特別控除の特例の創設
・居住用財産の譲渡所得の特別控除
・非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)について、一時的な出国により居住者等に該当しないこととなる場合の特例措置の創設
・仮想通貨に係る措置
などですね。

住宅借入金等の所得税の特別控除って、よく耳にする住宅ローン控除のことですよね。
それに特例ができたのですか?

平成31年10月の消費税率引上げによる駆け込み需要とその反動減が生じないよう、住宅借入金等特別控除の拡充措置がなされました。

どんな特例ですか?

通常の控除期間に、特例の控除期間が3年間加算されます。
なお、特例の控除期間においては、税率引上げ分(2%)に相当する額が控除されます(限度額あり)。

 

1 住宅・土地税制

 

(1) 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(措法41等)

@

個人が、住宅の取得等で特別特定取得に該当するものをし、かつ、その住宅の取得等をした家屋を令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、次に掲げる家屋の区分に応じそれぞれ次に定める金額を、適用年の11年目から13年目までの各年における控除額として、本税額控除の適用ができることとされました(措法41L〜P、措令26㉕〜㉗、震災特例法13の2BC、震災特例令15の2@〜B)。

一般の住宅(ロ及びハ以外の住宅)…次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額

(イ) 特別特定住宅借入金等の年末残高(4,000万円を限度)×1%
(ロ) 〔その住宅の取得等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額又は費用の額−その住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額(以下「消費税額等相当額」といいます。)〕(4,000万円を限度)×2%÷3

認定住宅…次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額

(イ) 認定特別特定住宅借入金等の年末残高(5,000万円を限度)×1%
(ロ) 〔その認定住宅の新築等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額−その認定住宅の新築等に係る対価の額に含まれる消費税額等相当額〕(5,000万円を限度)×2%÷3

東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の対象となる再建住宅…次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額

(イ) 再建特別特定住宅借入金等の年末残高(5,000万円を限度)×1.2%
(ロ) 〔その住宅の取得等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額又は費用の額−その住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等相当額〕(5,000万円を限度)×2%÷3

(注)

1 

上記「住宅の取得等」とは、居住用家屋の新築若しくは居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは既存住宅の取得又はその者の居住の用に供する家屋の増改築等をいいます。
なお、土地等の取得は含まれません

上記「特別特定取得」とは、その住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等相当額が、その住宅の取得等に係る課税資産の譲渡等につき「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」第3条の規定による改正後の消費税法第29条に規定する税率により課されるべき消費税額及びその消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額の合計額に相当する額である場合のその住宅の取得等をいいます。
上記イからハまでの「対価の額」又は「費用の額」については、住宅の取得等に関し、補助金等の交付を受ける場合又は住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受ける場合であっても、その補助金等の額又はその適用を受けた住宅取得等資金の額は控除されない金額となります。
A 二以上の住宅の取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の控除額の計算の調整措置、年末調整に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除その他の措置について、所要の措置が講じられました(措法41の2、41の2の2@D、措令26の3B、震災特例法13の2D〜H、震災特例令15の2C)。
B 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除に関する証明書について、その記載事項を法令上明確化することとされました(措令26の3B、26の4㉔、震災特例令15AC、15の2D)。
C 給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書に記載すべき事項について、住宅の取得等をした年月日等の記載を要しないこととされました(措規18の23@、18の23の2P)。

《適用関係》上記Bの改正は、居住日の属する年分が令和元年以後である個人に対し令和2年10月1日以後に交付する証明書について(改正措令附則14、改正震災令附則3、4)、上記Cの改正は、平成31年4月1日以後に提出する申告書について適用されます(改正措規附則8)。

 

(2) 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の2)について、その適用対象に、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の規定により行われた裁定に係る裁定申請書に記載された事業を行う事業者に対する次に掲げる土地等の譲渡(その裁定後に行われるものに限ります。)で、その譲渡に係る土地等がその事業の用に供されるものが加えられました(措法31の2A八の三)。

@ その裁定申請書に記載された特定所有者不明土地又はその土地の上に存する権利
A その裁定申請書に添付された事業計画書に係る計画に記載がされた特定所有者不明土地以外の土地又はその土地の上に存する権利(一定の事業に該当する場合におけるものを除く。)

《適用関係》この改正は、令和元年6月1日以後に行う優良住宅地等のための譲渡に該当する譲渡について適用されます(改正法附則34@)。

 

(3) 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(措法33)等について、次の措置が講じられました。

@ 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する土地収用法の特例の規定に基づいて資産が収用され、補償金を取得する場合を適用対象に追加する(措法33@一、措令22S二)。
A 証明書類から、特定被災区域内において防災集団移転促進事業と一体で行われる一団地の津波防災拠点市街地形成施設の整備に準ずる事業のために買い取られる土地等であることにつき国土交通大臣等の証明を受けた書類を、経過措置を講じた上、証明を受ける期限(平成31年3月31日)の到来をもって除外する(旧措規14D四の八)。
《適用関係》上記@の改正は、令和元年6月1日以後に資産が収用され、補償金を取得する場合について適用されます(改正法附則34A)。

(4) 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の 2,000万円特別控除(措法34)について、次の場合が適用対象に加えられました。

@ 重要文化財等として指定された土地が文化財保護法に規定する文化財保存活用支援団体(一定のものに限る。)に買い取られる一定の場合(措法34A四、措令22の7CD)
A 農業経営基盤強化促進法の農用地利用規程の特例の規定により定められた農用地利用規程に係る農用地利用改善事業の実施区域内にある農用地が、その農用地の所有者等の申出に基づき農地中間管理機構(一定のものに限る。)に買い取られる場合(措法34A七、措令22の7E)
《適用関係》上記@の改正は、平成 31 年4月1日以後に行う土地等の譲渡について(改正法附則34B)、上記Aの改正は、農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律の施行の日以後に行う土地等の譲渡について適用されます(改正法附則34C)。

(5)  特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除(措法34の2)について、経過措置が講じられた上、その適用対象から、農用地区域内にある農用地が農業経営基盤強化促進法の協議に基づき農地利用集積円滑化団体に買い取られる場合が除外されました(措法34の2A二十五、措令22の8㉙、改正法附則34D)。

 

(6)  農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除(措法34の3)について、経過措置が講じられた上、その適用対象から、農用地区域内にある農地等を農業経営基盤強化促進法に規定する農地利用集積円滑化事業のために農地利用集積円滑化団体に対して譲渡した場合が除外されました(措令22の9@、改正措令附則4B)。

 

(7) 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35)について、適用対象となる被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の範囲に、被相続人の居住の用に供することができない一定の事由(以下「特定事由」といいます。)により相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていなかった場合(一定の要件を満たす場合に限ります。)におけるその特定事由により居住の用に供されなくなる直前にその被相続人の居住の用に供されていた家屋及びその家屋の敷地の用に供されていた土地等を追加するとともに、その適用期限が令和5年12月31日まで4年延長されました(措法35B〜D)。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に行う対象譲渡について適用されます(改正法附則34E)。

 

(8) 帰還環境整備推進法人に対して土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除の特例等(震災特例法11の6)が次のとおり創設されました。

@ 一定の避難解除区域等内にある土地等が、帰還環境整備推進法人(一定のものに限る。以下同じ。)が行う帰還環境整備事業計画に記載された特定公益的施設又は特定公共施設のうち一定のものの整備に関する事業の用に供するために買い取られる場合には、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除(措法34の2)を適用する(震災特例法11の6@)。
A 帰還環境整備推進法人に対し一定の避難解除区域等内にある土地等の譲渡をした場合において、その譲渡に係る土地等がその帰還環境整備推進法人が行う帰還環境整備事業計画に記載された適正な形状、面積等を備えた一団の土地とするための一定の事業の用に供されるものであるときは、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の2)を適用する(震災特例法11の6A)。
 《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に行う土地等の譲渡について適用されます(改正法附則90)。

 

(9) 被災居住用財産に係る譲渡期限の延長等の特例(震災特例法11の7)について、譲渡期限の要件が7年から10年に3年延長されるとともに、その適用対象に、その有する家屋でその居住の用に供していたものが、警戒区域設定指示等が行われた日においてその警戒区域設定指示等の対象区域内に所在し、その警戒区域設定指示等が行われたことによってその居住の用に供することができなくなった個人が、その居住の用に供することができなくなった家屋又はその家屋及びその家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡をした場合等が加えられました(震災特例法11の7@)。

《適用関係》この改正は、令和元年分以後の所得税について適用されます(改正法附則91)。

 

 

2 金融・証券税制

 

(1) 株式交換等に係る譲渡所得等の特例(所法 57 の4)について、その対象株式に、株式交換完全親法人との間にその株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の株式が加えられました(所法57の4@、所令167の7@)。

《適用関係》この改正は、平成 31 年4月1日以後に行われる株式交換について適用されます(改正法附則4)。

 

(2) 分配時調整外国税相当額控除(所法93、165の5の3)について、所得税の額から控除する集団投資信託の収益の分配に係る分配時調整外国税相当額の計算方法等の見直しが行われました(所令220の2、292の6の2、所規40の10の2)。

《適用関係》この改正は、令和2年1月1日から施行されます(改正所令附則1二等)。

 

(3)  信託財産に係る利子等の課税の特例(所法176、180の2)について、集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収税額から控除することとされているその集団投資信託の信託財産について納付した所得税及び外国所得税の額の計算については、その集団投資信託の収益から収益調整金のみに係るものを除いて行うこととされたほか、所要の措置が講じられました(所法176B、180の2B、所令300@)。

《適用関係》この改正は、令和2年1月1日以後に支払われる収益の分配について適用されます(改正法附則9、改正所令附則8)。

 

(4) 勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄の利子所得等の非課税(措法4の2、4の3)について、財産形成非課税住宅(年金)貯蓄申告書を提出した個人が、その者の賃金の支払者、勤務先又は事務代行先の名称又は所在地の変更があった場合等に提出する財産形成非課税住宅(年金)貯蓄に関する異動申告書及び財産形成非課税住宅(年金)貯蓄の勤務先異動申告書(以下「申告書等」といいます。)には、その申告書等を提出する者の個人番号の記載を要しないこととされ、その申告書等の提出を受けた者は、その申告書等にその提出した者の個人番号を付記することとされました(措規3の5等)。

 

(5) 上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例(措法9の3の2)について、支払の取扱者が交付をする集団投資信託の収益の分配に係る上場株式等の配当等に係る源泉徴収税額から控除することとされているその集団投資信託の信託財産について納付した所得税及び外国所得税の額のうちその集団投資信託の収益の分配に対応する部分の金額の計算については、その集団投資信託の収益から収益調整金のみに係るものを除いて行うこととされたほか、所要の措置が講じられました(措法9の3の2、措令4の6の2)。

《適用関係》この改正は、令和2年1月1日から施行されます(改正法附則1六、改正措令附則1四)。

 

(6) 特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等(措法29の2)について、中小企業等経営強化法の改正を前提として、次の措置が講じられました。

@ 適用対象者の範囲に、中小企業等経営強化法第13条に規定する認定新規中小企業者等が同法に規定する認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画に従って行う社外高度人材活用新事業分野開拓に従事する社外高度人材で、取締役及び使用人等以外の者(その認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画の実施時期の開始等の日から新株予約権の行使の日まで引き続き居住者であること等の要件を満たす者に限る。以下「特定従事者」という。)を加える(措法29の2@A)。
A 特定従事者が本特例の適用を受けて取得をした株式を相続等により取得をした個人は、承継特例適用者に該当しないこととする(措法29の2C)。
B 特定従事者が、国外転出の時に有する一定の特定株式については、その国外転出の時に権利行使時価額による譲渡があったものとみなすほか、所要の措置を講じる(措法29の2D等)。

《適用関係》この改正は、中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律の施行の日以後に行われる付与決議に基づき締結される契約により与えられる特定新株予約権に係る株式について適用されます(改正法附則33)。

(7)  一般株式等(上場株式等)に係る譲渡所得等の課税の特例(措法37の10等)について、一般株式等(上場株式等)の譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税する事由から、次に掲げるものが除外されました(措法37の10B一、二、措令25の8DE)。

@ 法人の株主等がその法人の合併により合併法人との間にその合併法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の合併
A 法人の株主等がその法人の分割により分割承継法人との間にその分割承継法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の分割

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に行われる合併又は分割型分割について適用されます(改正法附則35)。

(8) 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例(措法37の11の3)について、特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、居住者等が発行法人等に対して役務の提供をした場合に発行法人等から取得する上場株式等で、その役務の提供の対価として居住者等に生ずる債権の給付と引換えに居住者等に交付されるものが加えられました(措令25の10の2M二十六)。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に発行法人等に対する役務の提供の対価としてその発行法人等から取得する上場株式等について適用されます(改正措令附則6@)。

 

(9) 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等(措法37の13)及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等(措法37の13の2)について、次の措置が講じられました。

@ 適用対象となる特定株式の範囲から、内国法人のうち認可金融商品取引業協会の規則においてその事業の成長発展が見込まれるものとして指定を受けている銘柄の株式を発行する等の要件を満たす株式会社により発行される株式を除外する(旧措法37の13@三)。
A 適用対象となる沖縄振興特別措置法の指定会社に係る同法の規定に基づく指定期限を2年延長する(措法37の13@三)。
 《適用関係》上記@の改正は、平成31年3月31日までに払込みにより取得した特定株式については、なお従前のとおりとなります(改正法附則36)。

(10) 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)(措法9の8、37の14)について、次の措置が講じられました。

@

非課税口座を開設している居住者等が一時的な出国により居住者等に該当しないこととなる場合の特例措置を次のとおり講じる。

イ  非課税口座を開設している居住者等が出国により居住者等に該当しないこととなる場合にはこれまでその非課税口座は廃止されていたが、給与等の支払者からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由に基因して出国をする場合には、その出国の日の前日までにその非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長継続適用届出書の提出をしたときは、引き続き非課税措置を適用する(措法37の14㉗㉘)。
継続適用届出書の提出をした者が帰国をした後、再び非課税口座において上場株式等の受入れを行わせようとする場合には、その継続適用届出書の提出をした日から起算して5年を経過する日の属する年の12月31日までに、その継続適用届出書の提出をした金融商品取引業者等の営業所の長に、帰国届出書の提出をしなければならない(措法37の14㉙)。

 

A 非課税口座を開設している居住者等が、その非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に対して非課税口座異動届出書を提出することで、その非課税口座にその年に設けられた勘定を変更できることとする(措令25の13の2AB)。
B 居住者等が非課税口座を開設することができる年齢要件をその年1月1日において18歳以上(改正前:20歳以上)に引き下げる(措法37の14D一)。
《適用関係》上記@の改正は、平成31年4月1日以後に出国する居住者等について(改正法附則37A)、上記Aの改正は、同日以後に提出する非課税口座異動届出書について(改正措令附則10)、上記Bの改正は、令和5年1月1日以後に開設される非課税口座について適用されます(改正法附則37@)。

 

(11) 未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)(措法9の9、37の14の2)について、居住者等が未成年者口座の開設並びに非課税管理勘定及び継続管理勘定の設定をすることができる年齢要件がその年1月1日において18歳未満(改正前:20歳未満)に引き下げられました(措法37の14の2@二、D一〜四)。

《適用関係》この改正は、令和5年1月1日以後に開設される未成年者口座及び同日以後に設けられる非課税管理勘定について適用されます(改正法附則38@)。

 

3 事業所得等関係

 

(1) 試験研究を行った場合の所得税額の特別控除(措法10)

@

試験研究費の総額に係る特別税額控除制度について、次のとおり見直しが行われました。

イ  

試験研究費の額に乗じる割合(以下「特別税額控除割合」という。)を次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める割合(上限:100分の10)とする(措法10@)。

(イ)

増減試験研究費割合が100分の8を超える場合
100分の9.9に、その増減試験研究費割合から100分の8を控除した割合に0.3を乗じて計算した割合を加算した割合

(ロ)

増減試験研究費割合が100分の8以下である場合
100分の9.9から、100分の8からその増減試験研究費割合を減算した割合に0.175を乗じて計算した割合を減算した割合(下限:100分の6)

(ハ)

その年が事業を開始した年である場合又は比較試験研究費の額が零である場合
100分の8.5

特別税額控除割合(上記イ及び下記ハ(イ))の上限を100分の14とする措置の適用期限を2年延長する(措法10A)。

試験研究費割合が100分の10を超える場合の措置について、次のとおり改組した上、その適用期限を2年延長する(措法10A一、二)。

(イ) 特別税額控除割合を、上記イ(イ)から(ハ)までにより算出した割合とその算出した割合に控除割増率(その試験研究費割合から100分の10を控除した割合に0.5を乗じて計算した割合(上限:100分の10)をいう。)を乗じて計算した割合を合計した割合(上限:100分の10)とする。
(ロ) 特別税額控除の適用を受けることができる上限額に、本年分の税額にその試験研究費割合から100分の10を控除した割合に2を乗じて計算した割合(上限:100分の10)を乗じて計算した金額を上乗せする。
A 中小企業技術基盤強化税制について、増減試験研究費割合が100分の5を超える場合の措置を増減試験研究費割合が100分の8を超える場合の措置に見直しが行われた上、その適用期限が2年延長されました。また、上記@ハ(イ)と同様の措置が講じられました(措法10CD)。
B

特別試験研究費の額に係る特別税額控除制度について、次のとおり見直しが行われました(措法10E、措令5の3I等)。
イ 適用対象となる特別試験研究費の範囲に、委託契約等により委託する一定の試験研究に係る費用を加える。
ロ 共同研究又は委託研究であって革新的なものに係る一定の試験研究費の額の特別税額控除割合を100分の25とする。
ハ 特別税額控除の適用を受けることができる上限額を本年分の税額の100分の10(改正前:100分の5)相当額に引き上げる。

C 平均売上金額の100分の10相当額を超える試験研究費に係る特別税額控除を廃止する(旧措法10F)。
《適用関係》この改正は、令和2年分以後の所得税について適用されます(改正法附則29)。

 

(2) 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(措法10の3)について、その適用期限が2年延長されました(措法10の3@)。

 

(3)  地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(措法10の4)について、次のとおり見直しを行った上、その適用期限が2年延長されました。

@ 平成31年4月1日以後に地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認を受けた個人がその承認地域経済牽引事業(一定のものに限る。)の用に供した特定事業用機械等について、償却割合を100分の50(改正前:100分の40)に、特別税額控除割合を100分の5(改正前:100分の4)に、それぞれ引き上げる(措法10の4@B)。
A 一の特定地域経済牽引事業施設等を構成する機械等の取得価額の合計額の上限を80億円(改正前:100億円)に引き下げる(措法10の4@)。
《適用関係》この改正は、個人が平成31年4月1日以後に取得等をした特定事業用機械等について適用されます(改正法附則30)。

 

(4) 特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(措法10の5の2)について、その対象設備が認定経営革新等支援機関等が資産の取得に係る計画の実施その他の取組が特定中小事業者の経営の改善に特に資することについて確認をした旨の記載がある経営改善指導助言書類に記載されたものに限定され、その適用期限が2年延長されました(措法10の5の2@)。

《適用関係》この改正は、個人が平成31年4月1日以後に取得等をした経営改善設備について適用されます。なお、経過措置が講じられています(改正法附則31)。

 

(5) 特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(措法10の5の3)について、経過措置が講じられた上、その対象設備から主として電気の販売を行うために取得等をして発電の用に供する設備で一定のものが除外され、その適用期限が2年延長されました(措法10の5の3@、中小企業等経営強化法施行規則8、平成31年経済産業省告示第85号)。

 

(6) 特定設備等の特別償却(措法11)について、次のとおり見直しが行われた上、その適用期限が2年延長されました(措法11@、平成31年財務省告示第96号、平成31年国土交通省告示第494号)。

@

船舶の特別償却制度

対象となる外航船舶につき、特定先進船舶(海上運送法の認定先進船舶導入等計画(先進船舶の導入に関するものに限る。)に記載された先進船舶のうち環境への負荷の低減に著しく資する一定のものをいう。)を加えるとともに、償却割合を次のとおりとする。

特定先進船舶 特定先進船舶以外のもの
日本船舶 100分の20 100分の17(改正前:100分の18)
日本船舶以外のもの 100分の18 100分の15(改正前:100分の16)
内航船舶について、環境への負荷の低減に係る要件の見直しを行う。
A 公害防止用設備又は自動車教習用貨物自動車に係る措置を廃止する。

《適用関係》上記@の改正は、平成31年4月1日以後に取得等をした減価償却資産について適用されます。なお、上記@及びAの改正については、経過措置が講じられています(改正法附則32@A)。

 

(7) 特定事業継続力強化設備等の特別償却(措法11の4)が創設され、青色申告書を提出する個人で中小事業者であるもののうち中小企業等経営強化法の認定を受けた同法の中小企業者に該当するもの(以下「特定中小事業者」といいます。)が、中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律の施行の日から令和3年3月31日までの間に、その認定に係る事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画(以下「認定事業継続力強化計画等」といいます。)に係る事業継続力強化設備等としてその認定事業継続力強化計画等に記載された機械装置及び器具備品並びに建物附属設備(一定の規模のものに限ります。)の取得等をして、その特定中小事業者の事業の用に供した場合には、その取得価額の100分の20相当額の特別償却ができることとされました。

 

(8) 特定地域における工業用機械等の特別償却(措法12)について、その適用期限が2年延長されました(措法12B)。

《適用関係》この改正は、個人が平成31年4月1日以後に取得等をした経営改善設備について適用されます。なお、経過措置が講じられています(改正法附則31)。

 

(9) 医療用機器等の特別償却(措法 12 の2)について、次の措置が講じられた上、その適用期限が2年延長されました。

@ 対象となる医療用機器のうち医療法に規定する構想区域等内の病院における効率的な活用を図る必要があるものについては、一定の要件を満たすものに限ることとする(措令6の4A等)。
A 青色申告書を提出する個人で医療保健業を営むものが、平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に、器具備品(医療用の機械装置を含む。)及びソフトウエア(一定の規模のものに限る。)のうち、医療従事者の勤務時間の短縮その他の医療従事者の確保に資する措置を講ずるために必要な一定のものの取得等をして、その個人の営む医療保健業の用に供した場合には、その取得価額の100分の15相当額の特別償却ができることとする(措法12の2A)。
B 青色申告書を提出する個人で医療保健業を営むものが、平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に、医療法の医療計画に係る構想区域等内において、病院用又は診療所用の建物等のうちその構想区域等に係る協議の場における協議に基づく病床の機能の分化及び連携の推進に係る一定のものの取得等をして、その個人の営む医療保健業の用に供した場合には、その取得価額の100分の8相当額の特別償却ができることとする(措法12の2B)。
《適用関係》上記@の改正は、平成31年4月1日以後に取得等をした医療用機器について適用されます(改正措令附則3)。

 

(10) 事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却(措法13の2)について、その適用期限が2年延長されました(措法13の2@)。

 

(11) 特定都市再生建築物の割増償却(措法14)について、次のとおり見直しが行われた上、その適用期限が2年延長されました。

@ 都市再生特別措置法の認定計画に基づく都市再生事業により整備される建築物に係る措置について、都市再生緊急整備地域のうち特定都市再生緊急整備地域以外の地域内において行われる都市再生事業により整備される建築物の償却割合を100分の25(改正前:100分の30)に引き下げる(措法14@A)。
A 雨水貯留利用施設に係る措置を廃止する(旧措法14A二)。

《適用関係》上記@の改正は、平成 31 年4月1日以後に取得等をする特定都市再生建築物について適用されます。なお、上記@及びAの改正については、経過措置が講じられています(改正法附則32BC)。

 

(12) 探鉱準備金制度(措法 22)について、その適用期限が3年延長されました(措法22@)。

 

(13) 復興産業集積区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(震災特例法10)について、復興産業集積区域(東日本大震災復興特別区域法の東日本大震災により多数の被災者が離職を余儀なくされ、又は生産活動の基盤に著しい被害を受けた地域を含む市町村の区域に限ります。以下(16)及び(19)について同じです。)内において産業集積事業等の用に供した機械装置、建物等及び構築物につき、償却割合及び特別税額控除割合を引き上げる措置の適用期限が2年延長されました(震災特例法10D)。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に取得等をした減価償却資産について適用されます(改正法附則88)。

 

(14) 企業立地促進区域において機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(震災特例法10の2)について、避難指示の全てが解除された日等のうちいずれか遅い日が平成26年4月1日以後である避難解除区域等につき、適用期間の末日をそのいずれか遅い日から7年(改正前:5年)を経過する日とされました(震災特例法10の2@B)。

 

(15) 避難解除区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(震災特例法10の2の2)について、避難指示が解除された日等のうちいずれか遅い日が平成26年4月1日以後である避難解除区域等につき、適用期間の末日をそのいずれか遅い日から7年(改正前:5年)を経過する日とされました(震災特例法10の2@B)。

 

(16) 復興産業集積区域において被災雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除(震災特例法10の3)について、復興産業集積区域内に所在する産業集積事業所に勤務する被災雇用者等に対して支給する給与等の額につき、特別税額控除割合を引き上げる措置の適用期限が2年延長されました(震災特例法10の3@)。

 

(17) 企業立地促進区域において避難対象雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除(震災特例法10の3の2)について、避難指示の全てが解除された日等のうちいずれか遅い日が平成26年4月1日以後である避難解除区域等につき、福島県知事の認定を受ける期間の末日をそのいずれか遅い日から7年(改正前:3年)を経過する日とされました(震災特例法10の3の2@)。

 

(18) 避難解除区域等において避難対象雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除(震災特例法10の3の3)について、避難指示が解除された日等のうちいずれか遅い日が平成26年4月1日以後である避難解除区域等につき、福島県知事の確認を受ける期間の末日をそのいずれか遅い日から7年(改正前:3年)を経過する日とされました(震災特例法10の3の3@)。

 

(19) 復興産業集積区域における開発研究用資産の特別償却等(震災特例法10の5)について、中小事業者の復興産業集積区域内において開発研究の用に供した開発研究用資産につき、償却割合を引き上げる措置の適用期限が2年延長されました(震災特例法10の5@)。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に取得等をした開発研究用資産について適用されます(改正法附則89)。

 

(20) 被災代替資産等の特別償却(震災特例法11)について、その適用期限が2年延長されました(震災特例法11@)。

 

 

4 その他の所得税関係

 

(1) 仮想通貨に係る措置が次のとおり創設されました。

@ 居住者の仮想通貨につき事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年12月31日において有する仮想通貨の価額は、その者が仮想通貨について選定した評価の方法(総平均法又は移動平均法)により評価した金額(評価の方法を選定しなかった場合等には、総平均法により評価した金額)とするほか、仮想通貨を棚卸資産の範囲から除外するなど、所要の整備が行われました(所法2@十六、48の2、所令5、119の2〜119の7)。
A 棚卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入(所法40)について、その対象となる棚卸資産に準ずる資産に、仮想通貨が加えられました(所令87)。

《適用関係》上記@の改正は、令和元年分以後の所得税について適用されます。なお、評価方法の選定に関して、平成31年4月1日に現に仮想通貨を有する個人については、同日にその仮想通貨を取得したものとみなす一定の経過措置が講じられています(改正法附則3、改正所令附則4)。上記Aの改正は、令和元年分以後の所得税について適用されます(改正所令附則2)。

 

(2) 障害者等の少額預金の利子所得等の非課税措置(所法10)について、その対象となる障害者等の範囲に中核市の長から療育手帳の交付を受けている者が加えられるとともに、その療育手帳が住所等確認書類等の範囲に加えられました(所令31の2、所規81の6等)。

 

(3) 家事関連費等の必要経費不算入等(所法45)について、森林環境税及び森林環境税に係る延滞金の額が加えられました(所法45@三の二)。

《適用関係》この改正は、個人が森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律(平成31年法律第3号)附則第1条ただし書に規定する規定の施行の日(令和6年1月1日)以後に納付する森林環境税及び森林環境税に係る延滞金について適用されます(改正法附則2)。

 

(4) 源泉控除対象配偶者に係る控除の適用(所法186の2、190)及び配偶者特別控除(所法83の2)について、次のとおり見直しが行われました(所法83の2A、186の2、190、203の4、別表二〜四)。

@ 給与等又は公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除の適用については、夫婦のいずれか一方しか適用できないこととする。
A 居住者の配偶者が、給与等や公的年金等の源泉徴収において源泉控除対象配偶者に係る控除の適用を受けている場合(その配偶者がその年分の所得税につき、年末調整をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合又は確定申告書の提出をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く。)には、その居住者は、その年分の所得税の確定申告において配偶者特別控除の適用ができないこととする。

《適用関係》上記@の改正は、令和2年1月1日以後に支払うべき給与等及び公的年金等について(改正法附則10、11@)、上記Aの改正は、令和2年分以後の所得税について適用されます(改正法附則5)。

 

(5) 確定申告書の記載事項及び添付書類(所法120等)

@ その年において支払を受けるべき給与等で年末調整の適用を受けたものを有する居住者が確定申告書を提出する場合には、その確定申告書の記載事項のうち年末調整で適用を受けた控除額と同額である所得控除に係る事項については、その控除の額等の簡便な記載によることができることとされました(所法120@、122B、125C、127C、所令263@、所規47@AC、48A)。
A

次に掲げる書類については、確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際提示することを要しないこととされました(旧所法120B四、旧所令262D、旧措令4の2HJ、25の9MN、25の11の2S、25の12の2㉔)。

給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
配当等とみなす金額に関する支払通知書
上場株式配当等の支払通知書
特定口座年間取引報告書
未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
特定割引債の償還金の支払通知書

《適用関係》上記@の改正は、令和元年分以後の確定申告書を平成31年4月1日以後に提出する場合について(改正法附則6@、改正所令附則6)、上記Aの改正は、平成31年4月1日以後に確定申告書を提出する場合について適用されます(改正法附則6A)。

 

 

(6) 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予(所法137の2)及び贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予(所法137の3)について、経過措置が講じられた上、民法の「時効の中断」の見直しに伴う所要の整備が行われました(所法137の2I、所法137の3K、改正法附則7)。

 

(7) 遺産分割等があった場合の修正申告の特例(所法151の6)について、経過措置が講じられた上、民法の「遺留分制度」の見直しに伴う所要の整備が行われました(旧所法151の6@三、改正法附則8)。

 

(8)公的年金等に係る源泉徴収について、次のとおり見直しが行われました(所法 203 の3、203 の6、
所令 319 の5、319 の6)。

@ 国内において公的年金等の支払を受ける居住者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書(以下「扶養親族等申告書」という。)の提出をしなかった場合の源泉徴収税額は、公的年金等の金額から公的年金等控除及び基礎控除に対応する控除の月割額(その月割額が最低保障額に満たない場合には、最低保障額)にその公的年金等の金額に係る月数を乗じて計算した金額を控除した残額に、5.105%の税率を乗じて計算する。
A 扶養親族等申告書については、公的年金等の支払を受ける者の押印に代えて、その者の自署によることができることとする。
B 扶養親族等申告書の記載事項から、同一生計配偶者又は扶養親族のうちに、同居特別障害者、その他の特別障害者又は特別障害者以外の障害者がある場合のその人数を除外する。

(注) 扶養親族等申告書の提出をすることができないものは見直しの対象から除かれます。

 

《適用関係》この改正は、令和2年1月1日以後に支払を受けるべき公的年金等について提出する扶養親族等申告書について適用されます(改正法附則11A)。

 

(9) 国等に対して重要文化財を譲渡した場合の譲渡所得の非課税措置(措法40の2)について、その適用対象に、重要文化財を文化財保護法に規定する文化財保存活用支援団体(一定のものに限られます。)に譲渡した一定の場合が加えられました(措法40の2@、措令25の17の2AB)。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に行う資産の譲渡について適用されます(改正法附則40)。

 

(10) 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例(措法40の3の2)について、内国法人について策定された債務処理計画が平成28年4月1日以後に策定されたものである場合において、その内国法人が同日前に株式会社地域経済活性化支援機構法の再生支援決定等の対象となった法人に該当しないものであることとの要件を満たすときは、一部の適用要件を満たすことを不要とした上、その適用期限が3年延長されました(措法40の3の2@)。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に行う贈与について適用されます(改正法附則41)。

 

(11) 次の給付金等については、所得税を課さないこととされました。

@ 児童扶養手当法による児童扶養手当の支給を受ける者等に対して給付される一定の給付金(措法41の8@四)
A 児童養護施設に入所している者等に対して都道府県等が行う金銭の貸付けに係る債務の免除を受けた場合のその免除により受ける経済的な利益の価額(措法41の8A)

(12) 政治活動に関する寄附をした場合の寄附金控除の特例又は所得税額の特別控除(措法41の18)について、その適用期限が令和6年12月31日まで5年延長されました(措法41の18@)。

 

(13) 保険年金の保険金受取人等に係る更正の請求の特例(旧措法41の20の2)及び特別還付金の支給制度(旧措法97の2)が廃止されました。

《適用関係》平成31年3月31日以前に行った保険年金の保険金受取人等に係る更正の請求及び同日前に提出した特別還付金請求書に係る特別還付金については、なお従前のとおりとなります(改正法附則46、84)。

 

(14) 被災した法人について債務処理計画が策定された場合の課税の特例(震災特例法12の3)について、内国法人が平成28年4月1日以後に株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法の支援決定の対象となった法人である場合において、同日前に株式会社地域経済活性化支援機構法の再生支援決定等の対象となった法人に該当しないものであることとの要件を満たすときは、一部の適用要件を満たすことを不要とした上、その適用期限が3年延長されました。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に債務処理計画に基づき内国法人に資産を贈与した場合について適用されます(改正法附則92)。

 

 

5 国際課税

 

(1) 外国税額控除(所法 95)について、次のとおり見直しが行われました。

@ 外国税額控除の対象とならない外国所得税の額について、居住者に対する配当等の支払があったものとみなして課される一定の外国所得税の額を加える(所令222の2B)。
A 年の中途で非居住者が居住者となった場合の外国税額控除に係る控除限度額における居住者期間の国外所得金額の計算において、非永住者については、非永住者の課税所得(国外所得金額のうち、国内において支払われ、又は国外から送金された国外源泉所得に係る部分)に限定する(所令258C)。
B 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除(措法37の12の2)、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除(措法37の13の2)又は先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除(措法41の15)の適用がある居住者の外国税額控除に係る控除限度額における国外所得金額を、これらの規定による損失の繰越控除の適用前(改正前:適用後)の金額とする(措令25の11の2S等)。
《適用関係》上記@及びAの改正は、令和2年分以後の所得税について(改正所令附則5)、上記Bの改正は、令和元年分以後の所得税について適用されます(改正措令附則7@、8@、15)。

 

(2) 国内源泉所得(所法161)について、その対象とされる内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行うその内国法人の株式等の譲渡による所得について、その内国法人の分割型分割により分割承継法人の株式その他の資産の交付を受けた場合の譲渡年における課税要件の整備が行われました(所令281F)。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に行われる分割型分割について適用されます(改正所令附則7)。

 

(3) 振替社債等の利子等の課税の特例(措法5の3)について、振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権につき支払を受ける剰余金の配当及び償還差益については、令和4年3月31日までに発行されるものに限り、振替社債等に含めることとされました(措法5の3C)。

 

(4)特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例(措法9の6)、投資法人の配当等に係る源泉徴収等の特例(措法9の6の2)、特定目的信託の剰余金の配当に係る源泉徴収等の特例(措法9の6の3)及び特定投資信託の剰余金の配当に係る源泉徴収等の特例(措法9の6の4)について、特定目的会社の利益の配当に係る所得税の額から控除する外国法人税の額は、その特定目的会社が納付した外国法人税の額のうち、支払を受ける利益の配当の額に対応する部分の額を限度として、その支払を受ける者ごとに計算した金額の合計額にするなど、控除外国法人税の額の計算方法等の見直しが行われました(措令4の9等)。

《適用関係》この改正は、令和2年1月1日から施行されます(改正法附則1六、改正措令附則1四)。

 

(5) 合併等により外国親法人株式等の交付を受ける場合の課税の特例(措法37の14の3)及び特定の合併等が行われた場合の株主等の課税の特例(措法37の14の4)について、合併等に係る適格要件及び被合併法人等の株主における旧株の譲渡損益の計上を繰り延べる要件の改正に伴い、次の措置が講じられました。

@ 非居住者株主が合併等により合併法人等の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある外国法人の株式の交付を受けた場合には、旧株の譲渡損益を計上する。
A 個人が、適格合併等に該当しない合併等により合併法人等の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある外国法人(特定軽課税外国法人又は特定軽課税外国法人の親法人である外国法人に限る。)の株式の交付を受けた場合には、旧株の譲渡損益を計上する。

《適用関係》この改正は、平成31年4月1日以後に合併等が行われる場合について適用されます(改正法附則39)。

 

(6) 非居住者の内部取引に係る課税の特例(措法40の3の3)及び国外所得金額の計算の特例(措法41の19の5)について、次のとおり見直しが行われました。

@

特定無形資産内部取引に係る価格調整措置(措法40の3の3D等)
恒久的施設を有する非居住者の事業場等と恒久的施設及び居住者の事業場等と国外事業所等との間の特定無形資産内部取引について、その特定無形資産内部取引の対価の額とした額を算定するための前提となった事項についてその内容と相違する事実が判明した場合には、税務署長は、その特定無形資産内部取引の内容及びその特定無形資産内部取引の当事者が果たす機能その他の事情(その相違する事実及びその相違することとなった事由の発生可能性を含む。)を勘案して、その特定無形資産内部取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその特定無形資産内部取引の対価の額とされるべき額を算定するための最も適切な方法により算定した金額を独立企業間価格とみなして更正又は決定をすることができる。
ただし、上記により算定した金額と特定無形資産内部取引の対価の額とした額との相違が20%を超えていない場合は、本措置は適用しない。

A

特定無形資産内部取引に係る価格調整措置に係る適用免除(措法40の3の3E〜G等)税務職員が次のイ又はロに掲げる場合に該当することを明らかにする書類の提出等を求めた場合において、一定の日までにその書類の提出等があるときは、上記@の措置は適用しない。

非居住者又は居住者が特定無形資産内部取引の対価の額とした額を算定するための前提となった事項の内容等を記載した書類を作成し、又は取得している場合
特定無形資産内部取引に係る判定期間(非居住者又は居住者と特殊の関係にない者から受ける特定無形資産の使用等による収入が最初に生じた日の属する年の1月1日から5年を経過する日までの期間をいう。)にその特定無形資産の使用等により生ずることが予測された利益の額とその判定期間にその特定無形資産の使用等により生じた利益の額との相違が20%を超えていない場合
B 非居住者の内部取引に係る課税の特例及び国外所得金額の計算の特例に係る所得税の更正期間及び更正の請求期間等を7年(改正前:6年)に延長する。
《適用関係》この改正は、令和3年分以後の所得税について適用されます(改正法附則42、45)。

 

(7) 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例(措法40の4、40の5)について、次のとおり見直しが行われました。また、特殊関係株主等である居住者に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例(措法40の7、40 の8)について、所要の改正が行われました。

@

特定外国関係会社(固定施設を有しておらず、かつ、事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないものに限る。)の範囲から次の外国関係会社を除外する(措法40の4A二イ)。

外国子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その収入金額のうちに占めるその株式等に係る剰余金の配当等の額の割合が著しく高いこと等の一定の要件に該当するもの
特定子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その本店所在地国を同じくする管理支配会社によってその事業の管理、支配及び運営が行われていること、その管理支配会社がその本店所在地国で行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たしていること、その収入金額のうちに占めるその株式等に係る剰余金の配当等の額及びその株式等の譲渡に係る対価の額の割合が著しく高いこと等の一定の要件に該当するもの
その他一定の要件に該当するもの
A

特定外国関係会社の範囲に次のいずれにも該当する外国関係会社を加える(措法40の4A二ハ)。

各事業年度の非関連者等収入保険料の合計額の収入保険料の合計額に対する割合が10%未満であること
各事業年度の非関連者等支払再保険料合計額の関連者等収入保険料の合計額に対する割合が50%未満であること
B

次のイに掲げる金額からロに掲げる金額を減算した金額を、部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものを除く。)に係る部分合算課税の対象となる特定所得の金額に加える(措法40の4E七の二)。

収入保険料の合計額から支払った再保険料の合計額を控除した残額
支払保険金の額の合計額から収入した再保険金の額の合計額を控除した残額
C 居住者が合算課税の対象となった外国法人等から受ける剰余金の配当等に係る二重課税調整について、確定申告書、修正申告書又は更正請求書(改正前:確定申告書)に控除を受ける剰余金の配当等の額等を記載した書類の添付がある場合に限り、適用できることとする等の見直しを行う(措法40の5B)。

《適用関係》上記@の改正は、令和元年分以後の各年分の課税対象金額等(外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額、部分適用対象金額及び金融子会社等部分適用対象金額に係るものに限ります。)について適用されます(改正法附則43@)。
上記A及びBの改正は、外国関係会社の平成 31年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額等について適用されます(改正法附則43A)。上記Cの改正は、令和元年分以後の所得税について適用されます(改正法附則28)。

 

(8) 令和2年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者等に係る課税の特例(措法41の23)が次のとおり創設されました。

@ 令和2年に開催される東京オリンピック競技大会若しくは東京パラリンピック競技大会に参加をし、又は大会関連業務に係る勤務その他の人的役務の提供を行う一定の非居住者の一定の国内源泉所得(平成31年4月1日から令和2年12月31日までの間におけるその参加又はその提供に係るものに限る。)については、所得税を課さない。
A 大会関連業務を行う一定の外国法人が支払を受ける一定の使用料(平成31年4月1日から令和2年12月31日までの間において行われる業務に係るものに限る。)については、その使用料がその外国法人の恒久的施設帰属所得に該当するものである場合には所得税の課税対象外とし、その使用料がその外国法人の恒久的施設帰属所得に該当するものでない場合には所得税を課さない。

(9) 特定外国法人が特定金融機関等との間で行う債券現先取引に係る利子の非課税措置(措法42の2)について、次の措置が講じられた上、その適用期限が2年延長されました(措法42の2B〜DIK)。

@

非課税の対象となる債券現先取引の範囲に、特定金融機関等(一定の金融機関等に限る。)との間で行われる次に掲げる債券に係る債券現先取引を加える。

外国が発行し、又は保証する一定の債券
外国法人が発行する一定の債券(イに掲げる債券を除く。)
A 外国投資信託の受託者である特定外国法人がその外国投資信託の信託財産につき支払を受ける債券現先取引に係る利子については、その外国投資信託が適格外国証券投資信託である場合に限り、本非課税措置を適用する。

《適用関係》この改正は、特定外国法人が、平成31年4月1日以後に開始する振替国債等に係る特定債券現先取引につき支払を受ける利子について適用されます(改正法附則47)。

 

(10) 実施特例法について、次のとおり見直しが行われました。

@

配当等又は譲渡収益に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例等(実施特例法3の2)について、次の措置を講ずる(実施特例法3の2等)。

相手国居住者等配当等について、その対象となる所得の範囲に譲渡収益(資産の譲渡により生ずる収益で所得税法の施行地にその源泉があるものをいい、配当等に含まれるものを除く。)を加えた上、その範囲は相手国居住者等に係る相手国等との間の租税条約の規定においてその相手国居住者等の所得として取り扱われる範囲とする。
 配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例等の適用対象となる相手国団体配当等、第三国団体配当等、特定配当等その他の一定の所得の範囲について所要の見直しを行う。
A 相手国等の相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者が、その適用に係る資産等の譲渡等をした場合において、その相手国等との間の租税条約の規定においてその適用を受けたことを考慮するものとされているときは、その資産等については外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例における外国転出時課税の規定の適用を受けた有価証券等とみなして、所得税法その他所得税に関する法令の規定を適用する(実施特例法5の2)。
《適用関係》上記@の改正は、平成31年4月1日以後に相手国居住者等が支払を受けるべき相手国居住者配当等について、上記Aの改正は、居住者が平成31年4月1日以後に譲渡等をする資産等について適用されます(改正法附則85)。

 

6  国税通則法等

 

(1) 税務当局による情報照会の仕組みについて、次のとおり整備が行われました。

@

特定事業者等へ報告を求める措置の創設(通則法74の7の2)

所轄国税局長は、特定取引(電子情報処理組織を使用して行われる取引その他の取引のうちこの規定による処分によらなければこれらの取引を行う者を特定することが困難である取引をいう。以下同じ。)の相手方となり、又は特定取引の場を提供する事業者又は官公署(特定事業者等)に、特定取引者(特定取引を行う者をいい、下記ロ(イ)に該当する場合にあっては、1,000万円の課税標準を生じ得る取引金額を超える特定取引を行う者に限る。以下同じ。)の氏名又は名称、住所又は居所及び個人番号又は法人番号につき、特定取引者の範囲を定め、60日を超えない範囲内においてその準備に通常要する日数を勘案して定める日までに、報告することを求めることができる。

上記イの処分は、国税に関する調査について必要がある場合において、次のいずれかに該当するときに限り、あらかじめ国税庁長官の承認を受けた上で行うことができる。

(イ)  特定取引者が行う特定取引と同種の取引を行う者に対する国税に関する過去の調査において、その取引に係る課税標準が1,000万円を超える者のうち半数を超える数の者について、その取引に係る課税標準等又は税額等につき更正決定等をすべきと認められている場合
(ロ)  特定取引者が行う特定取引に係る物品又は役務を用いることにより課税標準等又は税額等について国税に関する法律の規定に違反する事実を生じさせることが推測される場合
(ハ) 特定取引者が行う特定取引の態様が経済的必要性の観点から通常の場合にはとられない不合理なものであることから、その特定取引者がその特定取引に係る課税標準等又は税額等について国税に関する法律の規定に違反する事実を生じさせることが推測される場合
 《適用関係》この改正は、令和2年1月1日以後に国税庁長官の承認を受けてする報告の求めについて適用されます(改正法附則27A)。
A

事業者等へ協力を求める措置の整備(通則法74の12)
国税庁等の当該職員は、国税に関する調査について必要があるときは、事業者等に、その調査に関し参考となるべき帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めることができることを法令上明確化する。

 《適用関係》この改正は、令和2年1月1日から施行されます(改正法附則1六)。

 

(2) 電帳法について、次のとおり見直しが行われました。

@ 電磁的記録による保存等の承認の申請等(電帳法6)について、新たに業務を開始した個人は、その業務の開始の日以後2月を経過する日までに電磁的記録による保存等の承認の申請書を提出することができることとする(電帳法6@A)。
A 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等(電帳規3)について、スキャナ保存の承認を受けている者は、その承認以前に作成又は受領をした契約書・領収書等の重要書類(過去に本措置に係る届出書を提出した重要書類と同一の種類のものを除く。)について、所轄税務署長等への届出書の提出等の一定の要件の下、スキャナ保存を行うことができることとする(電帳規3F)。

《適用関係》上記@の改正は、令和元年9月30日以後に提出する申請書について(改正法附則86)、上記Aの改正は、同日以後に提出する届出書に係る重要書類について適用されます(改正電帳規附則2)。

 

 

出所:国税庁

 

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