

おはようございます。今日は電子帳簿保存法のスキャナ保存について、よく質問を受ける内容を一緒に確認しましょう。訂正削除履歴が残るシステムを使えば、タイムスタンプなしでもスキャナ保存できるのか、という質問なんですが。
はい。最近クライアント先から「タイムスタンプって費用がかかるから、別の方法はないんですか」って聞かれることが多いです。履歴が残るシステムなら大丈夫なんでしょうか?
結論から言うと、可能です。ただし条件があります。そのシステムが「客観的な時刻証明機能」を備えている必要があるんです。
客観的な時刻証明機能、ですか?
そうです。つまり、入力期限内に保存したことを、第三者から見ても信頼できる方法で証明できる仕組みのことです。例えば、クラウドサービスのサーバーがNTPサーバーと同期していて、保存日時が改ざんできないようになっているケースですね。
なるほど。じゃあ、自社で作ったシステムはどうなんでしょう? うちのクライアントで自社開発の文書管理システムを使っている会社があるんですが。
それが重要なポイントです。原則として、自社システムは認められません。なぜなら、自社で時刻を変更できてしまう可能性があるからです。客観性が担保できないんですね。
ああ、そうか。自分で「昨日保存した」って時刻を変えられちゃったら、意味ないですもんね。
その通り。ただし例外があります。自社がシステムベンダーで、そのシステムを他社に提供している場合です。利用者である第三者との関係性から、非改ざん性が認められるんです。
つまり、システム会社が自分たちの作ったシステムを使う分には認められるけど、一般企業が自社開発したものはダメ、ということですね。
正確です。では、具体的にどんなシステムなら大丈夫か、事例を見てみましょう。
お願いします!
まず「訂正削除履歴が残るシステム」の例。これは、データを変更したら、いつ誰が何を変更したかの記録が全て残るシステムです。クラウド型の文書管理サービスで、Dropbox BusinessやBox、Google Driveのビジネス版などが該当します。
うちのクライアントのA社が使っているのはBoxですね。あれなら大丈夫なんですか?
はい。ただし条件があります。単に履歴が残るだけでなく、保存時刻が「客観的に」証明できる必要があります。つまり、そのクラウドサービスのサーバーが正確な時刻情報と同期していることが重要なんです。
NTPサーバーとの同期、というのは具体的にどういうことですか?
NTPというのは、インターネット上で正確な時刻情報を配信する仕組みです。大手クラウド事業者のサーバーは通常、このNTPサーバーと定期的に時刻を同期しているので、保存時刻の信頼性が高いんです。
なるほど。では「訂正削除できないシステム」というのは?
これは、一度保存したら、利用者側では全く変更も削除もできないシステムのことです。例えば、WORM(Write Once Read Many)機能を持つクラウドストレージサービスがこれに当たります。
ウォーム機能?初めて聞きました。
WORMは「一度だけ書き込み、何度でも読み出し」という意味です。CDやDVDのように、一度データを書き込んだら二度と変更できない仕組みですね。クラウド版だと、Amazon S3のオブジェクトロック機能などがあります。
じゃあ、B社が使っている無料版のGoogleドライブはどうなんでしょう?
それは微妙ですね。無料版は個人向けサービスなので、ビジネス用途での電帳法対応を保証していません。きちんとビジネスプラン以上の、電帳法対応を明示しているサービスを選ぶべきです。
そうなんですね。費用を抑えたいクライアントには、どう説明すればいいでしょう?
タイムスタンプ自体は、最近かなり安くなっています。月額数千円から利用できるサービスもあります。一方、電帳法対応のクラウドサービスも月額料金がかかるので、どちらが良いかは会社の規模や書類の量によりますね。
具体的な費用感を教えてもらえますか?
例えば、タイムスタンプサービスなら月1,000?3,000円程度から。クラウドストレージの電帳法対応プランも、ユーザー数にもよりますが月1,000円程度から始められます。年間の書類保存枚数が多い場合は、クラウド保存の方が割安になることもあります。
ちなみに、中小企業のC社から「PDFで保存してサーバーに入れておけば大丈夫ですよね?」って聞かれたんですが...
それだけでは不十分です。どちらの方式を選ぶにしても、入力期限内に保存したことを証明できる必要があります。自社サーバーだと、後から日付を変更できてしまう可能性があるので認められません。
やはり自社サーバーは厳しいんですね。
はい。ただし、もう一つ重要なポイントがあります。タイムスタンプの代替要件を満たしたとしても、スキャナ保存の他の要件は全て満たす必要があるんです。
他の要件というと?
解像度が200dpi以上、カラー画像で保存、検索機能の確保、それから見読可能性の確保などです。タイムスタンプだけクリアすれば良いわけではないんですね。
なるほど。システム選びって、タイムスタンプの代替だけじゃなくて、総合的に電帳法の要件を満たせるかどうかを見ないといけないんですね。
その通りです。最近は「電帳法対応」と謳っているクラウドサービスが増えていますが、どの要件に対応しているのか、しっかり確認することが大切です。
クライアントにシステムを勧める時の注意点はありますか?
まず、そのサービスが本当に訂正削除履歴を記録できるのか、または訂正削除ができないのか確認すること。次に、保存日時の客観性が担保されているか。そして、電帳法の他の要件にも対応しているか。この3点をチェックしてください。
ベンダーに確認すべき質問事項とかありますか?
良い質問ですね。「NTPサーバーとの時刻同期はされていますか?」「訂正削除履歴はどのように記録されますか?」「電帳法のスキャナ保存要件への対応状況は?」この3つは必ず確認しましょう。
わかりました。あと、もし税務調査が入った時は、どうやって証明するんでしょう?
クラウドサービスの場合、管理画面から保存日時や履歴のレポートを出力できることが多いです。そのレポートを提示することで、適切な時期に保存したことを証明できます。
じゃあ、システムを選ぶ時に、そういうレポート機能があるかどうかも確認すべきですね。
その通り。電帳法対応というのは、ただ保存するだけでなく、税務調査の時に証明できることが重要なんです。
よく分かりました。まとめると、訂正削除履歴が残るシステムや訂正削除できないシステムでタイムスタンプの代替は可能だけど、客観的な時刻証明機能があることが必須、ということですね。
完璧です。そして自社システムは原則NG、クラウドサービスを選ぶなら電帳法対応を明示しているもの、他の保存要件も忘れずに、ということも覚えておいてください。
はい、ありがとうございます。次にクライアントから質問されても、自信を持って答えられそうです!
そのシステムに入力期間内に入力したことを確認できる時刻証明機能を備えていれば、タイムスタンプの付与要件に代えることができます。
なお、この場合であっても、スキャナ保存に係る他の要件を満たす必要があることにご留意ください。
国税関係書類についてスキャナ保存する場合には、その国税関係書類に係る記録事項にタイムスタンプを付与することが要件として規定されており(規則2E二ロ)、当該保存義務者が訂正削除履歴の残る又は訂正削除できないシステムに保存する方法により規則第2条第6項第1号の入力期限内に当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、その確認をもって当該タイムスタンプの付与要件に代えることができることとされています。
この訂正削除履歴の残る(あるいは訂正削除ができない)システムでタイムスタンプ付与の代替要件を満たすためには、タイムスタンプが果たす機能である、ある時点以降変更を行っていないことの証明が必要となり、保存義務者が合理的な方法でこの期間制限内に入力したことを証明する必要があると考えられます。
その方法として、取扱通達4−26では例えば、SaaS型のクラウドサービスが稼働するサーバ(自社システムによる時刻の改ざん可能性を排除したシステム)がNTPサーバ(ネットワーク上で現在時刻を配信するためのサーバ)と同期しており、かつ、スキャナデータが保存された時刻の記録及びその時刻が変更されていないことを確認できるなど、客観的にそのデータ保存の正確性を担保することができる場合が 明示されています。
なお、タイムスタンプの付与要件に代えて訂正削除履歴の残る(あるいは訂正削除できない)システムに保存する場合であっても、スキャナ保存に係る他の要件を満たす必要があることにご留意ください。
出所:国税庁

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