

高速道路の利用が多い顧問先から相談を受けたのですが、ETCの利用証明書って、毎回全部保存しないといけないんですよね?特に運送業や営業車を多く抱える会社さんだと、一日に何十件も高速道路を使うことがあって、正直全部の証明書をダウンロードして保存するのは現実的じゃないと思うんです。
そうですよね、多頻度で高速道路を利用する事業者さんからは同じようなご相談をよくいただきます。実は消費税法上、このケースには特例的な取扱いが認められています。全ての利用証明書の保存が困難な場合には、クレジットカード会社から受け取るクレジットカード利用明細書と、利用した高速道路会社などの任意の一取引に係る利用証明書をダウンロードして、この二つを併せて保存すれば、仕入税額控除を行って差し支えないとされているんです。
なるほど、それなら助かりますね。でも今回聞きたいのは、その電子帳簿保存法上の取扱いなんです。消費税ではOKでも、電子帳簿保存法だと話が変わってくるんじゃないかと気になっていて。
いいポイントですね。実はこの二つの法律では前提となる考え方が少し違うんです。所得税法や法人税法では、取引に関して「受領した」書類を保存する義務があります。ETCの利用証明書は、利用者がウェブサイト上で必要な範囲を指定して発行するものなので、発行していない証明書については、そもそも「受領」していないことになります。ですから、あえて全件分を発行して保存する義務はありません。
つまり、ダウンロードしていないものは対象外ということですね。
その通りです。ただし注意が必要なのは、消費税の仕入税額控除のために任意でダウンロードした一取引分の利用証明書です。これは実際に「受領」した書類に該当しますので、電子帳簿保存法上の電子取引データの保存要件を満たして保存する必要が出てきます。
具体的にはどんな要件を満たせばいいんでしょうか。
大きく分けて三つあります。一つ目は真実性の確保で、タイムスタンプを付与するか、訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備して運用することです。二つ目は可視性の確保で、パソコンやディスプレイ、プリンタを備え付けて、税務調査などの際に速やかに画面や書面で提示できるようにしておくことです。三つ目は検索機能の確保で、取引年月日・取引金額・取引先の三つの項目で検索できる状態にしておく必要があります。ただし基準期間の売上高が5,000万円以下などの要件を満たす場合は、この検索機能の確保は不要になります。
なるほど。クレジットカードの利用明細データについても、同じように保存が必要になりますよね。
はい、そちらも電子取引に該当しますので、電磁的記録のまま同じ要件で保存する必要があります。ですから実務上は、クレジットカード利用明細データと、消費税の特例のためにダウンロードした一取引分の利用証明書、この両方を電子帳簿保存法の要件に沿って一緒に保存しておくイメージを持っていただくとわかりやすいと思います。
整理すると、全ての利用証明書を保存する義務はないけれど、消費税の特例を使うために「これ」と決めてダウンロードした一部の証明書については、電子帳簿保存法のルールに従ってきちんと保存しなければならない、ということですね。
まさにその通りです。多頻度で高速道路を利用する事業者さんほど、この整理を誤解しやすいポイントですので、顧問先には「ダウンロードした瞬間から保存義務が発生する」という考え方をぜひお伝えしておいてください。
帳簿書類の保存義務の前提として、申告納税制度の下で適正な申告を実現するためには納税者による日々の取引に関する記録の保存が重要であり、取引に関して受領した領収書等の書類は、所得税法及び法人税法上、保存する義務があります。
もっとも、ETCの利用証明書については、納税者が必要に応じて自ら必要な範囲を指定してウェブ上で発行してもらうものであり、必ずしも利用証明書の全てを納税者が受領しているものではありません。
このため、所得税法及び法人税法上、このように、納税者が受領していない利用証明書についてまで、あえて発行を受け、ダウンロードして保存する必要はありません。
ただし、消費税法における仕入税額控除を適用するために、任意の一取引に係る利用証明書の発行を受けた(ダウンロードした)場合には、その利用証明書自体は取引に関して受領した書類に該当する(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A参照)ことから、これを電子帳簿保存法の要件を満たして保存する必要があることにご注意ください。
出所:国税庁
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