T 平成30年度の主な改正事項

今回の所得税の改正はどんな感じですか?
私にも関係ありそうですか?

ありますよ。
今回は、本当に盛りだくさんです。
特に、
 会社員の方には「給与所得控除」
 自営業者の方には「基礎控除」
 おじいちゃん、おばあちゃんには「公的年金等控除」
 そしてすべての方に、「基礎控除」
これらの改正が、きわめて多くの方に影響があります。

1 個人所得課税の見直し

 

(1) 給与所得控除(所法28)

 

給与所得控除額を一律10万円引き下げ、その上限額が適用される給与等の収入金額が850万円(改正前:1,000万円)とされるとともに、その上限額を195万円(改正前:220万円)に引き下げることとされました(所法28B)。

 

この結果、給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じてそれぞれ次のとおりとなります。

給与等の収入金額 給与所得控除額

 162.5万円以下
 162.5万円超180万円以下
 180万円超360万円以下
 360万円超660万円以下
 660万円超850万円以下
 850万円超

55万円

その収入金額×40%−10万円

その収入金額×30%+8万円

その収入金額×20%+44万円

その収入金額×10%+110万円

195万円

 

また、この改正に伴い、給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表及び年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表について所要の措置が講じられました(所法別表第2〜別表第5)。

 

(2) 公的年金等控除(所法35、措法41の15の3等)

 

公的年金等控除額を一律10万円(公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が、1,000万円を超え2,000万円以下である場合は20万円、2,000万円を超える場合は30万円引き下げることとされ、公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額について、上限を設けることとされました(所法35C、措法41の15の3@)。

 

この結果、公的年金等控除額は、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額及び公的年金等の収入金額に応じてそれぞれ次のとおりとなります。

 

@65歳未満の場合

公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額

1,000 万円以下

1,000 万円超

2,000 万円以下

2,000 万円超

130 万円以下

60 万円

50 万円

40 万円

130 万円超
410 万円以下

公的年金等の収入金額

×25%+27.5 万円

公的年金等の収入金額

×25%+17.5 万円

公的年金等の収入金額

×25%+7.5 万円

410 万円超
770 万円以下

公的年金等の収入金額

×15%+68.5 万円

公的年金等の収入金額

×15%+58.5 万円

公的年金等の収入金額

×15%+48.5 万円

770 万円超
1,000 万円以下

公的年金等の収入金額

×5%+145.5 万円

公的年金等の収入金額

×5%+135.5 万円

公的年金等の収入金額

×5%+125.5 万円

1,000 万円超

195.5 万円

185.5 万円

175.5 万円

 

A65歳以上の場合

公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額

1,000 万円以下

1,000 万円超

2,000 万円以下

2,000 万円超

330 万円以下

110 万円

100 万円

90 万円

330 万円超
410 万円以下

公的年金等の収入金額

×25%+27.5 万円

公的年金等の収入金額

×25%+17.5 万円

公的年金等の収入金額

×25%+7.5 万円

410 万円超
770 万円以下

公的年金等の収入金額

×15%+68.5 万円

公的年金等の収入金額

×15%+58.5 万円

公的年金等の収入金額

×15%+48.5 万円

770 万円超
1,000 万円以下

公的年金等の収入金額

×5%+145.5 万円

公的年金等の収入金額

×5%+135.5 万円

公的年金等の収入金額

×5%+125.5 万円

1,000 万円超

195.5 万円

185.5 万円

175.5 万円

また、この改正に伴い、非居住者の公的年金等について、分離課税の対象となる金額等の算定における控除額計算の基礎となる額を、65歳未満の者については5万円(改正前:6万円)に、65歳以上の者については9万5千円(改正前:10万円)に、それぞれ引き下げることとされました(所法169三、213@一イ、措法41の15の3B)。

 

(3) 基礎控除(所法86等)

 

基礎控除について、控除額を一律10万円引き上げるとともに、合計所得金額が2,400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできないこととされました(所法86@)。この結果、基礎控除額は、個人の合計所得金額に応じてそれぞれ次のとおりとなります。

個人の合計所得金額

控除額

 2,400 万円以下
 2,400 万円超2,450 万円以下
 2,450 万円超2,500 万円以下
 2,500 万円超

48 万円

32 万円

16 万円

0円

 

また、この改正に伴い、年末調整において基礎控除の適用を受ける場合に合計所得金額の見積額を申告する等の所要の措置が講じられました(所法190@二ホ、195の3)。

 

(4) 扶養親族等の範囲について、次の改正が行われました。

@ 勤労学生の合計所得金額要件75万円以下(改正前:65万円以下)に引き上げる(所法2@三十二)。
A 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件48万円以下(改正前:38万円以下)に引き上げる(所法2@三十三、三十四)。
B 源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件95万円以下(改正前:85万円以下)に引き上げる(所法2@三十三の四)。

 

(5) 配偶者特別控除(所法83の2)について、対象となる配偶者の合計所得金額要件48万円超133万円以下(改正前:38万円超123万円以下)とし、その控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分を、それぞれ10万円引き上げることとされました(所法83の2@一)。

 

(6) 特定支出控除(所法57の2)
特定支出の範囲に、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費等で通常要する支出を加えるとともに(所法57の2A、所令167の3A)、特定支出の範囲に含まれている単身赴任者の帰宅旅費について、1か月に4往復を超えた旅行に係る帰宅旅費を対象外とする制限を撤廃した上、帰宅のために通常要する自動車等を使用することにより支出する燃料費及び有料道路の料金の額を加えることとされました(所令167の3D)。

 

(7) 青色申告特別控除(措法25の2)について、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除の控除額を55万円(改正前:65万円)に引き下げる一方、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者であって、次に掲げる要件のいずれかを満たすものに係る青色申告特別控除の控除額を65万円とすることとされました(措法25の2BC、措規9の6A〜D)。

@ その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより「電磁的記録の備付け及び保存」又は「電磁的記録の備付け及びその電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存」(以下これらを「電磁的記録の備付け等」という。)を行っていること。
A その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うこと。

(8) 所得金額調整控除(措法41の3の3)等の創設

@ その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、特別障害者に該当するもの又は年齢23歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有するものの総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の100分の10相当額を、給与所得の金額から控除することとされました(措法41の3の3@D)。
A その年の給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額の合計額が10万円を超えるものの総所得金額を計算する場合には、給与所得控除後の給与等の金額(10万円を限度)及び公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を限度)の合計額から10万円を控除した残額を、給与所得の金額から控除することとされました(措法41の3の3AD)。
B 上記@の所得金額調整控除は、年末調整において適用できることとされました(措法41の3の4@)。
C 公的年金等に係る確定申告不要制度における公的年金等に係る雑所得以外の所得金額を算定する場合には、上記Aの所得金額調整控除額を給与所得の金額から控除することとされました(措法41の3の3E)。
《適用関係》

上記(1)から(8)までの改正は、平成32年分以後の所得税について適用されます。
なお、(7)について、同年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳の備付けを開始する日に、これらの帳簿の電磁的記録の備付け等に係る承認を受けていない場合において、同年中の日であってその承認を受けてこれらの帳簿の電磁的記録の備付け等を行っているときは、上記(7)@の要件を満たすこととする等の所要の措置が講じられています(改正法附則1六、2、14、15、70、79〜81、改正所令附則9)。

 

2事業所得等関係

 

(1) 返品調整引当金(旧所法53)について、所要の経過措置が講じられた上、廃止されました(改正法附則5、改正所令附則8)。

 

(2) 延払条件付販売等に係る収入及び費用の帰属時期(旧所法65)について、対象となる資産の販売等がリース譲渡に限定されるとともに、所要の経過措置が講じられました(所法65、改正法附則8、改正所令附則12)。

 

(3) 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(措法10の2)の創設

 

青色申告書を提出する個人が、平成30年4月1日(次のA及びBに掲げるものにあっては、エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律の施行の日)から平成32年3月31日までの間に、その個人の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める減価償却資産の取得等をして、国内にあるその個人の事業の用に供した場合には、その取得価額の100分の30相当額の特別償却ができることとされました(措法10の2@)。

 

また、その個人が中小事業者である場合には、この特別償却との選択適用により、その取得価額の100分の7相当額の特別税額控除(調整前事業所得税額の100分の20相当額を限度)の適用を受けることができることとされました(措法10の2B)。

@ エネルギーの使用の合理化等に関する法律に定める特定事業者又は特定連鎖化事業者(特定連鎖化事業者が行う連鎖化事業(以下「特定連鎖化事業」という。)の加盟者(以下「特定加盟者」という。)を含む。)主務大臣に提出された計画において設置するものとして記載されたエネルギーの使用の合理化のための機械その他の減価償却資産でエネルギーの使用の合理化に特に効果の高い一定のもの(特定加盟者の特定連鎖化事業に関する計画に係るものにあっては、その特定加盟者が設置しているその特定連鎖化事業に係る工場等に係るものに限る。)
A エネルギーの使用の合理化等に関する法律の認定を受けた工場等を設置している者その認定に係る連携省エネルギー計画に記載された連携省エネルギー措置の実施により取得等をされる機械その他の減価償却資産でエネルギーの使用の合理化に資する一定のもの
B

エネルギーの使用の合理化等に関する法律の認定を受けた荷主その認定に係る荷主連携省エネルギー計画に記載された荷主連携省エネルギー措置の実施により取得等をされる機械その他の減価償却資産でエネルギーの使用の合理化に資する一定のもの
なお、エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(旧措法10の2)は、適用期限の到来をもって廃止されました。

(4) 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(措法10の4の2)について、地域再生法の改正に伴い、移転型事業の対象地域に準地方活力向上地域が加えられた上(措法10の4の2@B)、その適用期限が平成32年3月31日まで2年延長されました。

 

(5) 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除(改正後:地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除)(措法10の5)について、次のとおり見直しが行われました。

@ 同意雇用開発促進地域に係る措置は、適用期限の到来をもって廃止する(旧措法10の5@)。
A

地方事業所基準雇用者数に係る措置及び地方事業所特別基準雇用者数に係る措置を地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度に改組するとともに、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。

「基準雇用者数が5人以上(中小事業者にあっては、2人以上)であること」との要件を、「地方事業所基準雇用者数のうち特定新規雇用者数に達するまでの数とその地方事業所基準雇用者数から新規雇用者総数を控除した数とを合計した数が2人以上であること」とする(措法10の5@一)。
比較給与等支給額について、適用年の前年分における給与等の支給額に基準雇用者割合を乗じて計算した金額に乗ずる割合を100分の20(改正前:100分の30)に引き下げる(措法10の5B十三)。
地域再生法の改正に伴い、移転型事業の対象地域に準地方活力向上地域を加える(措法10の5@二ロ、B二)。

地方事業所基準雇用者数に係る措置における税額控除限度額を次の金額の合計額とする。

(イ) 30万円(基準雇用者割合が100分の8以上(移転型事業にあっては、100分の5以上)であることとの要件を満たす場合には、60万円)に、地方事業所基準雇用者数(その適用年の基準雇用者数を上限。以下同じ。)のうち特定新規雇用者数に達するまでの数を乗じて計算した金額(措法10の5@二)
(ロ) 20万円(基準雇用者割合が100分の8以上(移転型事業にあっては、100分の5以上)であることとの要件を満たす場合には、50万円)に、新規雇用者総数(地方事業所基準雇用者数を上限。以下同じ。)から特定新規雇用者数を控除した数のうちその新規雇用者総数の100分の40に達するまでの数とその地方事業所基準雇用者数からその新規雇用者総数を控除した数とを合計した数を乗じて計算した金額(措法10の5@二)
地方事業所特別基準雇用者数に係る措置における地方事業所特別税額控除限度額について、準地方活力向上地域の特定業務施設に係る金額を20万円(原則:30万円)にその特定業務施設に係る地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額とする(措法10の5A)。
地方事業所基準雇用者数に係る措置は、上記?の制度との選択適用とし、地方事業所特別基準雇用者数に係る措置は上記?を選択した場合においても適用できることとする(措法10の5AD)。
特別税額控除の適用を受けることができる限度額を適用年の年分の調整前事業所得税額の100分の20(改正前:100分の30)相当額に引き下げる(措法10の5@A)。
《適用関係》 この改正は、平成31年分以後の所得税について適用されます(改正法附則64@)。

 

 

(6) 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除(改正後:給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の所得税額の特別控除)(所得拡大促進税制)(措法10の5の4)について、次のとおり見直しが行われた上、それぞれの税額控除額の限度額がその年分の調整前事業所得税額の100分の20相当額とされました。

@ 青色申告書を提出する個人が、平成31年から平成33年までの各年において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該個人の継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の当該継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が100分の3以上であり、かつ、当該個人の国内設備投資額がその償却費総額の100分の90相当額以上であるときは、所得税の額から雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の100分の15相当額(上記要件に加え、教育訓練費の額から比較教育訓練費の額を控除した金額の当該比較教育訓練費の額に対する割合が100分の20以上であるときは、100分の20相当額)を控除できることとする(措法10の5の4@)。
A

青色申告書を提出する中小事業者が、平成31年から平成33年までの各年(上記@の適用を受ける年を除く。)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該中小事業者の継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の当該継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が100分の1.5以上であるときは、所得税の額から雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の100分の15相当額(次に掲げる要件を満たす場合には、100分の25相当額)を控除できることとする(措法10の5の4A)。   

継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が100分の2.5以上であること。
教育訓練費の額から中小企業比較教育訓練費の額を控除した金額のその中小企業比較教育訓練費の額に対する割合が100分の10以上であること、又はその中小事業者が、その年の12月31日までにおいて中小企業等経営強化法の認定を受け、当該認定に係る経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことにつき一定の証明がされたものであること。
《適用関係》 この改正は、平成31年分以後の所得税について適用されます(改正法附則65)。

(7) 革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(情報連携投資等の促進に係る税制)(措法10の5の5)が創設され、青色申告書を提出する個人で生産性向上特別措置法に規定する認定革新的データ産業活用事業者であるものが、同法の施行の日から平成33年3月31日までの間に、同法の認定革新的データ産業活用計画に従って一定のソフトウエアを新設又は増設した場合(その新設又は増設をするソフトウエア並びにそのソフトウエアとともに取得又は製作する機械装置及び器具備品の取得価額の合計額が5,000万円以上の場合に限ります。)において、取得等した革新的情報産業活用設備(上記ソフトウエア等のうち一定のものをいいます。)をその事業の用に供したときは、その取得価額の100分の30相当額の特別償却とその取得価額の100分の5(継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の当該継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が100分の3に満たない場合には、100分の3)相当額の税額控除(適用年の年分の調整前事業所得税額の100分の20(継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の当該継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が100分の3に満たない場合には、100分の15)相当額を限度)との選択適用ができることとされました(措法10の5の5、措令5の6の5)。

 

(8) 所得税の額から控除される特別控除額の特例(措法10の6)について、中小事業者を除く一定の個人が、平成31年から平成33年までの各年(以下「対象年」といいます。)において試験研究を行った場合の所得税額の特別控除等の適用を受けようとする場合において、その対象年の継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額以下であり、かつ、国内設備投資額がその年の償却費総額の100分の10相当額以下であるときは、試験研究を行った場合の所得税額の特別控除等を適用できないこととされました(措法10の6D)。

 

(9) 特定設備等の特別償却(措法11)について、青色申告書を提出する一定の個人が、エネルギー環境適合製品の開発及び製造を行う事業の促進に関する法律に規定する非化石エネルギー源のうち永続的に利用することができると認められるもの(以下「再生可能エネルギー源」といいます。)から電気若しくは熱を得るため若しくは再生可能エネルギー源から燃料を製造するための機械その他の減価償却資産(以下「再生可能エネルギー利用資産」といいます。)のうち太陽光若しくは風力以外の再生可能エネルギー源の利用に資するもの又は主として再生可能エネルギー利用資産とともに使用するための機械その他の減価償却資産でその再生可能エネルギー利用資産の持続的な利用に資するものとして一定のものを取得等して、その事業の用に供した場合には、その取得価額の100分の20相当額の特別償却ができることとされました(措法11@)。

 

(10) 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却(措法13)について、基準雇用障害者数が20人以上であって、重度障害者割合が100分の50以上であることとの要件における重度障害者割合が100分の55以上に引き上げられた上、その適用期限が平成32年3月31日まで2年延長されました(措法13@)。

《適用関係》 この改正は、平成31年分以後の所得税について適用されます(改正法附則67A)。

(11) 次世代育成支援対策に係る基準適合認定を受けた場合の次世代育成支援対策資産の割増償却(旧措法13 の2)について、所要の経過措置が講じられた上、廃止されました(改正法附則67B)。

 

(12) 企業主導型保育施設用資産の割増償却(措法13 の3)が創設され、青色申告書を提出する個人が、平成30 年4月1日から平成32 年3月31 日までの間に、子ども・子育て支援法に規定する施設のうち保育事業を目的とするもの(以下「事業所内保育施設」といいます。)の新設又は増設をする場合(その新設又は増設をする事業所内保育施設とともにその事業所内保育施設における保育事業の用に供する一定の遊戯用の構築物、遊戯具その他の一定の減価償却資産(以下「幼児遊戯用構築物等」といいます。)の取得等をする場合で、かつ、その事業所内保育施設につき子ども・子育て支援法の規定による助成事業に係る助成金の交付を受ける場合に限ります。)において、その新設又は増設に係る事業所内保育施設を構成する建物等及びその幼児遊戯用構築物等(以下「企業主導型保育施設用資産」といいます。)の取得等をして、保育事業の用に供したときは、その企業主導型保育施設用資産につき、3年間(その事業所内保育施設につきその助成事業に係る助成金で一定のものの交付を受ける期間に限ります。)、普通償却額の100 分の12(建物等及び構築物については、100 分の15)相当額の割増償却ができることとされました(措法13 の3)。

 

(13) 倉庫用建物等の割増償却(措法15)の適用期限が平成32 年3月31 日まで2年延長されました(措法15@)。

 

(14) 金属鉱業等鉱害防止準備金(措法20)の適用期限が平成32 年まで2年延長されました(措法20@)。

 

(15) 特定災害防止準備金(措法20 の2)について、準備金の一括取崩事由に、特定廃棄物最終処分場の廃止の確認を受けた場合及び特定廃棄物最終処分場に係る許可が取り消された場合が加えられた上、その適用期限が平成32 年3月31 日まで2年延長されました(措法20 の2@B)。

 

(16) 農業経営基盤強化準備金(措法24 の2)について、準備金の取崩事由に次に掲げる場合を加えるとともに、その取崩金額は次に掲げる場合に応じそれぞれ次に定める金額とすることとされた上、適用期限が平成32年3月31日まで2年延長されました(措法24の2@B)。

@ 認定計画の定めるところにより農用地等(農用地並びに農業用の機械装置、器具備品、建物等、構築物及びソフトウエアをいう。以下同じ。)の取得等をした場合   その農用地等の取得価額相当額
A 農用地等(農業用の器具備品及びソフトウエアを除く。)の取得等をした場合(上記@に掲げる場合を除く。)   その農用地等の取得価額相当額

(17) 農用地等を取得した場合の課税の特例(措法24 の3)について、認定計画への記載がない農用地等の取得等をした場合の農業経営基盤強化準備金取崩額(上記?A)は、必要経費算入限度額の計算の基礎から除くこととされました(措法24 の3@)。

 

(18) 社会保険診療報酬の所得計算の特例(措法26)について、その適用対象となる社会保険診療の範囲に、介護医療院サービスが加えられました(措法26A)。

 

(19) 家内労働者の事業所得等の所得計算の特例(措法27)について、必要経費に算入する金額の最低保障額が55 万円(改正前:65 万円)に引き下げられました(措法27、措令18 の2A)。

《適用関係》 この改正は、平成32 年分以後の所得税について適用されます(改正法附則72)。

(20) 中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措法28の2)の適用期限が平成32年3月31日まで2年延長されました(措法28の2@)。

 

3 金融・証券税制

 

(1)  配当等とみなす金額(所法25)について、対価の交付が省略されたと認められる非適格合併又は非適格分割型分割が行われた場合には、その非適格合併又は非適格分割型分割に係る被合併法人又は分割法人の株主等が株式その他の資産の交付を受けたものとみなして、対価の交付があった場合と同様に、その省略された対価を配当等とみなして計算することとされました(所法25A、所令61CD)。

 

(2) 株式交換等に係る譲渡所得等の特例(所法57の4)について、旧株の譲渡又は贈与がなかったものとみなされる株式交換に、株式交換完全親法人の株式の交付が省略されたと認められる一定のものが加えられました(所法57の4@、所令167の7A)。

 

(3) 分配時調整外国税相当額控除(所法93)及び非居住者に係る分配時調整外国税相当額の控除(所法165の5の3)の創設

@ 居住者が集団投資信託の収益の分配の支払を受ける場合には、その支払を受ける収益の分配に係る分配時調整外国税相当額(当該収益の分配に係る外国所得税の額で当該収益の分配に係る所得税の額から控除された金額のうち、その支払を受ける収益の分配に対応する部分の金額に相当する金額をいいます。以下同じです。)は、その年分の所得税の額から控除することとされました(所法93)。
A 恒久的施設(以下「PE」といいます。)を有する非居住者が集団投資信託の収益の分配の支払を受ける場合には、その支払を受ける収益の分配(PE帰属所得に該当するものに限ります。)に係る分配時調整外国税相当額は、PE帰属所得に係る所得の金額に係る所得税相当額を限度に、その年分の所得税の額から控除することとされました(所法165の5の3)。
《適用関係》 この改正は、平成32年1月1日以後に支払を受ける集団投資信託の収益の分配に係る分配時調整外国税相当額について適用されます(改正法附則9、13)。

(4) 信託財産に係る利子等の課税の特例(所令300、306の2)について、次の措置が講じられました。

@ 受益権を他の証券投資信託の受託者に取得させることを目的とする証券投資信託の信託財産について納付した所得税(外国所得税を含む。)の額は、信託財産を当該証券投資信託の受益権に対する投資として運用することを目的とする公社債投資信託以外の証券投資信託で、その設定に係る受益権の募集が公募以外の方法により行われたものの収益の分配に係る所得税の額から控除することとする(所令300A、306の2@)。
A 集団投資信託の収益の分配に係る所得税の額から控除する外国所得税の額は、当該収益の分配に係る所得税の額に当該集団投資信託の外貨建資産への運用割合を乗じた額を限度とする(所令300B、306の2A)。
B 集団投資信託の収益の分配の支払を受ける者の当該収益の分配に係る源泉徴収税額は、当該収益の分配に係る所得税の額から、上記Aにより控除された外国所得税の額のうち、その支払を受ける者の当該収益の分配に対応する部分の金額として一定の計算をした金額を控除した額とする(所令300C、306の2A)。
C 集団投資信託を引き受けた内国法人及び外国法人は、当該集団投資信託の収益の分配の支払をする場合には、書面又は電磁的方法により当該収益の分配の支払を受ける個人又は法人に対し、分配時調整外国税相当額の計算の基礎となる通知外国所得税の額等一定の事項を通知しなければならないこととする(所令300E〜L、306の2C〜J)。
《適用関係》 この改正は、平成32年1月1日以後に支払われる収益の分配について適用されます(改正所令附則18、19)。

(5) 上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例(措法9の3の2)について、次の措置が講じられました。

@

支払の取扱者が交付をする上場株式等の配当等の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める金額がある場合には、当該金額は、当該支払の取扱者が源泉徴収する当該上場株式等の配当等に係る所得税の額を限度に当該所得税の額から控除することとする。

投資信託(証券投資信託その他一定のものに限る。)又は特定受益証券発行信託の収益の分配当該投資信託又は特定受益証券発行信託を引き受けた内国法人又は外国法人が当該投資信託又は特定受益証券発行信託の信託財産について納付した所得税(外国所得税を含む。)の額のうち当該収益の分配に対応する部分の金額として一定の計算をした金額(措法9の3の2B一、措令4の6の2K)
特定目的会社の利益の配当当該特定目的会社が納付した外国法人税の額のうち当該利益の配当に対応する部分の金額として一定の計算をした金額(措法9の3の2B二、措令4の6の2L)
投資法人の投資口の配当等当該投資法人が納付した外国法人税の額のうち当該配当等に対応する部分の金額として一定の計算をした金額(措法9の3の2B三、措令4の6の2M)
特定目的信託の受益権の剰余金の配当当該特定目的信託に係る受託法人が納付した外国法人税の額のうち当該剰余金の配当に対応する部分の金額として一定の計算をした金額(措法9の3の2B四、措令4の6の2N)
A 個人が上場株式等の配当等の交付を受ける場合には、その交付を受ける上場株式等の配当等に係る調整対象外国税相当額は、分配時調整外国税相当額控除の対象とし、その交付を受ける年分の所得税の額から控除する。ただし、当該個人がPEを有する非居住者である場合には、PE帰属所得に係る所得の金額に係る所得税相当額を限度とする(措法9の3の2E、措令4の6の2P)。
B 個人が上場株式等の配当等の交付を受ける場合には、その交付を受ける上場株式等の配当等に係る源泉徴収税額は、上記@イに定める金額のうち所得税の額に対応する部分として一定の計算をした金額を加算した額とする(措法9の3の2E、措令4の6の2Q)。
C 上場株式等の配当等の支払の取扱者は、当該上場株式等の配当等の交付をする場合には、書面又は電磁的方法により当該交付を受ける個人又は法人に対し、分配時調整外国税相当額の計算の基礎となる控除外国所得税相当額等一定の事項を通知しなければならないこととする(措令4の6の2?〜?)。
《適用関係》 この改正は、個人又は内国法人若しくは外国法人に対して平成32年1月1日以後に支払われる上場株式等の配当等について適用されます(改正法附則60)。

(6) 特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例(措法9の6)、投資法人の配当等に係る源泉徴収等の特例(措法9の6の2)、特定目的信託の剰余金の配当に係る源泉徴収等の特例(措法9の6の3)及び特定投資信託の剰余金の配当に係る源泉徴収等の特例(措法9の6の4)について、次の措置が講じられました。

@ 特定目的会社が納付した外国法人税の額は、当該特定目的会社の利益の配当の額に係る所得税の額に外貨建資産への運用割合を乗じた額を限度に、当該所得税の額から控除する(措法9の6@、措令4の9@)。
A 居住者が特定目的会社の利益の配当の支払を受ける場合には、特定目的会社分配時調整外国税相当額(当該特定目的会社が納付した外国法人税の額で当該利益の配当に係る所得税の額から控除された金額のうち、その支払を受ける利益の配当に対応する部分の金額に相当する金額をいう。以下同じ。)は、その年分の所得税の額から控除する。また、PEを有する非居住者が特定目的会社の利益の配当(PE帰属所得に該当するものに限る。)の支払を受ける場合には、特定目的会社分配時調整外国税相当額は、PE帰属所得に係る所得の金額に係る所得税相当額を限度に、その年分の所得税の額から控除する(措法9の6B、措令4の9E)。
B 特定目的会社の利益の配当の支払を受ける者の当該利益の配当に係る源泉徴収税額は、当該利益の配当に係る所得税の額から、特定目的会社分配時調整外国税相当額を控除した額とする(措令4の9G)。
C 特定目的会社は、当該特定目的会社の利益の配当の支払をする場合には、書面又は電磁的方法により当該利益の配当の支払を受ける個人又は法人に対し、特定目的会社分配時調整外国税相当額の計算の基礎となる通知外国法人税相当額等一定の事項を通知しなければならないこととする(措法9の6D、措令4の9J〜Q)。
D 投資法人の配当等の特例、特定目的信託の剰余金の配当の特例及び特定投資信託の剰余金の配当の特例について、上記@〜Cと同様の措置を講ずる(措法9の6の2@BD、9の6の3@BD、9の6の4@BD、措令4の10CF〜M、4の11CF〜M、5CF〜M)。
《適用関係》 この改正は、平成32年1月1日以後に支払われる利益の配当等について適用されます(改正法附則61)。

(7) 非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税措置(NISA・つみたてNISA)(措法37の14)について、次の措置が講じられました。

@ 非課税口座を開設しようとする居住者等は、金融商品取引業者等の営業所の長に対し、非課税適用確認書等の添付を要しない非課税口座簡易開設届出書の提出ができることとする(措法37の14D一、措令25の13D二)。
A 非課税口座内上場株式等は、非課税期間終了の日に非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所に開設されている特定口座がある場合には、その金融商品取引業者等の営業所の長に対する移管依頼書の提出により他の年分の非課税管理勘定又は特定口座以外の他の保管口座に移管されるものを除き、当該特定口座に移管されることとする(措法37の14D二、四、措令25の10の2M二十六ハ、25の13GQ)。
B 上記Aについて、未成年者口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)における未成年者口座内上場株式等の移管(課税未成年者口座を構成する特定口座への移管を含む。)についても同様とする(措法37の14の2D二ホ、措令25の10の2M二十七ハ、25の13の8D〜F)。

(注)非課税期間とは、NISA・ジュニアNISAの場合は、その年分の非課税管理勘定が設けられた日の属する年の1月1日から5年、つみたてNISAの場合は、その年分の累積投資勘定が設けられた日の属する年の1月1日から20年をいいます。

《適用関係》 上記@の改正は、平成31年1月1日以後に提出する非課税口座簡易開設届出書について適用されます(改正法附則74)。

(8) 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例(措令25の10の2)について、特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、一定の譲渡制限付株式で、その譲渡制限が解除された時に、当該譲渡制限付株式が管理されている口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所に開設されている特定口座に一定の方法により移管されるものが加えられました(措令25の10の2M二十五)。

《適用関係》 この改正は、平成30年4月1日以後に譲渡制限が解除される一定の譲渡制限付株式について適用されます(改正措令附則9@)。

(9) 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例(エンジェル税制)(措法41の19)について、次の措置が講じられました。

@ 適用対象となる株式の範囲から、総合特別区域法に規定する指定会社により発行される株式を除外する(旧措法41の19@二)。
A 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限を平成32年3月31日まで2年延長する(措法41の19@三)。
B 適用対象となる地域再生法に規定する特定地域再生事業を行う株式会社(平成30年3月31日までに同法の確認を受けたものに限る。)により発行される株式で当該確認を受けた日から同日以後3年を経過する日までの間に発行されるものを、当該特定地域再生事業を行う株式会社により発行される株式で地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成32年3月31日までの間に発行されるものとする(措法41の19@四)。
《適用関係》

上記@の改正は、平成30年4月1日前に指定を受けた指定会社により発行される株式については、従前のとおりとされています(改正法附則83@)。
また、上記Bの改正について、地域再生法の一部を改正する法律の施行の日前に地域再生法の確認を受けた株式会社により発行された株式を払込みにより取得をした場合は、従前のとおり適用があることとされています(改正法附則83A)。

(10) 特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例(措法37の13の3)が創設され、個人が、産業競争力強化法等の一部を改正する法律の施行の日から平成33年3月31日までの間に産業競争力強化法に規定する特別事業再編計画について認定を受けた法人(以下「認定特別事業再編事業者」といいます。)の行った当該特別事業再編計画に係る特別事業再編によりその有する他の法人の株式等を譲渡し、当該認定特別事業再編事業者の株式の交付を受けた場合におけるその株式等の譲渡については、その譲渡がなかったものとみなすこととされました(措法37の13の3、措令25の12の3)。

 

4土地・住宅税制

 

(1) 固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例(所法58)、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(措法34の2)及び農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(措法34の3)について、コンクリート等で覆われた農作物の栽培施設の敷地の譲渡についても、一定の要件を満たす場合には、これらの特例の適用対象とすることとされました(所法58@一、措法34の2A二十五、措令22の9@)。

《適用関係》 この改正は、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律の施行の日以後に行う交換等について適用されます(改正法附則7、改正措令附則8@)

(2) 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(措法34の2)について、特定の民間住宅地造成事業のために土地等を譲渡した場合の適用期限が平成32年12月31日まで3年延長されました(措法34の2A三)。

 

(3) 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)及び特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)について、買換資産が非耐火既存住宅である場合の要件に、取得の日以前25年以内に建築されたものであること又は一定の耐震基準に適合することのいずれかを満たすこと(その取得期限までに改修等により要件を満たせば、要件を満たすこととなります。)を加えた上、その適用期限が平成31年12月31日まで2年延長されました(措法36の2@A、36の5、措令24の2B一)。

《適用関係》 この改正のうち買換資産が非耐火既存住宅である場合の要件の部分は、平成30年1月1日以後に譲渡資産の譲渡をし、同年4月1日以後に買換資産を取得する場合について適用されます(改正措令附則8A)。

 

(4) 大規模な住宅地等造成事業の施行区域内にある土地等の造成のための交換等の場合の譲渡所得の課税の特例(旧措法37の7)等が廃止されました(旧措法37の7〜37の9、改正法附則73)。

 

(5) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5)の適用期限が平成31年12月31日まで2年延長されました(措法41の5F一)。

 

(6) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5の2)の適用期限が平成31年12月31日まで2年延長されました(措法41の5の2F一)。

 

5国際課税

 

(1) 租税条約上のPEの定義と異なる場合の調整規定等の整備

@

PEの範囲について、租税条約において異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者又は外国法人(以下「非居住者等」といいます。)については、その租税条約においてPEと定められたもの(国内にあるものに限ります。以下同じです。)を国内法上のPEとすることとされました(所法2@八の四)。
(注)相互免除法についても同様の改正が行われました(相互免除法4の2)。

A いわゆる支店PEについて、その範囲を国内にある支店、事務所等その他事業を行う一定の場所に改めるとともに(所令1の2@)、いわゆる建設PEについて、建設PEを構成する場所を、国内にある長期建設工事現場等に限定し(所法2@八の四ロ、所令1の2A)、いわゆる代理人PEについて、在庫保有代理人及び注文取得代理人の定義に関する規定を削除するとともに、同業者代理人に関する措置を廃止する等の措置が講じられました(旧所令1の2B)。

(2) PE認定の人為的回避防止措置の導入

@ 建設PEの期間要件について、契約を分割して建設工事等の期間を1年以下とすることにより建設PEを構成しないことがその契約の分割の主たる目的の一つであったと認められる場合には、正当な理由に基づいて契約を分割したときを除いて、分割された期間を合計して判定を行うこととされました(所令1の2B)。
A その活動が非居住者等の事業の遂行にとって準備的又は補助的な性格のものである場合に限り、保管、展示、引渡しその他の特定の活動を行うことのみを目的として保有する場所等は、PEに含まれないものとされました(所令1の2C)。ただし、事業を行う一定の場所を使用し、又は保有する非居住者等と特殊の関係にある者(その個人又は法人との間に直接・間接の持分割合50%超の関係その他の支配・被支配の関係にある者をいいます(所令1の2H)。次のBにおいて同じです。)が当該事業を行う一定の場所において事業上の活動を行う等の場合において、当該事業を行う一定の場所がその者のPEに該当する等の一定の要件に該当し、かつ、当該事業上の活動が一体的な業務の一部として補完的な機能を果たすときの当該事業を行う一定の場所については、この適用はないこととされました(所令1の2D)。
B 代理人PEの範囲について、国内において非居住者等に代わって、その事業に関し、反復して契約を締結し、又は一定の契約の締結のために反復して主要な役割を果たす者で、これらの契約が非居住者等の資産の所有権の移転等に関する契約である場合における当該者を加えるとともに、独立代理人の範囲から、専ら又は主として一又は二以上の自己と特殊の関係にある者に代わって行動する者を除外することとされました(所令1の2FG)。
《適用関係》 上記(1)及び(2)の改正は、非居住者の平成31年分以後の所得税又は同年1月1日以後に支払を受けるべき国内源泉所得について適用され、所要の経過措置が講じられています(改正法附則3、55、改正所令附則2)。

(3) 外国組合員に対する課税の特例(措法41の21)について、一定のPE帰属所得で投資組合契約に基づいて行う事業に係るPEに帰せられるものに対する所得税を非課税とする措置に改組することとした上、これに伴う所要の措置が講じられました(措法41の21@〜BJ)。

《適用関係》 この改正は、非居住者が平成31年以後の各年において有することとなる国内源泉所得について適用されます(改正法附則84)。

(4) 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例(措法40の4)について、主に次の見直しのほか所要の措置が講じられました。また、特殊関係株主等である居住者に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例(措法40の7)についても所要の措置が講じられています。

@ 事業基準から除外される外国関係会社に一定の外国金融持株会社を追加し、実体基準及び管理支配基準の判定における一定の外国金融持株会社の「主たる事業」の取扱いについて整備する(措法40の4A三)。
A 解散により外国金融子会社等に該当しないこととなった部分対象外国関係会社について、その該当しないこととなった日から原則として同日以後3年を経過する日までの期間内の日を含む事業年度の一定の所得について、部分合算課税の対象としないこととする(措法40の4E)。
《適用関係》 この改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます(改正法附則77)。

 

6その他

 

(1) 給与所得者の源泉徴収に関する申告書の提出時期等の特例(所法198)について、給与等の支払受ける居住者は、給与所得者の保険料控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合には、生命保険料控除証明書又は地震保険料控除証明書の提出又は提示に代えて、当該生命保険料控除証明書又は地震保険料控除証明書に記載されるべき事項を電磁的方法により提供することができることとされました(所法198F、所令319の2F)。

《適用関係》 この改正は、平成32年10月1日以後に提出する給与所得者の保険料控除申告書について適用されます(改正法附則16)。

(2) 支払調書等、国外送金等調書及び国外証券移管等調書の電子情報処理組織(e-Tax)又は光ディスク等による提出義務制度について、提出義務の対象となるかどうかの判定基準となるその年の前々年に提出すべきであった支払調書等の枚数が100枚以上(改正前:1,000枚以上)に引き下げられました(所法228の4@、措法42の2の2@、国外送金法4A)。

《適用関係》 この改正は、平成33年1月1日以後に提出すべき支払調書等について適用されます(改正法附則18、85、122)。

(3) 山林所得に係る森林計画特別控除(措法30の2)の適用期限が平成32年まで2年延長されました(措法30の2@)。

 

(4) 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税(措法40)について、次の措置が講じられました。

@ 一般特例の適用を受けた寄附財産で一定の方法により管理されているものの譲渡をし、その譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもって取得した資産を当該方法により管理する等の一定の要件を満たす場合には、非課税措置の継続適用を受けることができることとする(措法40D二)。
A 承認特例の対象となる贈与等の範囲に国立大学法人等に対する一定の贈与等を加えるとともに、承認特例において贈与等を受けた財産が一定の株式等でないこととの要件を撤廃する(措令25の17F)。

(5) 国等に対して重要文化財を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例(旧措法40の2)について、特例の対象範囲から重要有形民俗文化財を国等に譲渡した場合が除外されました(措法40の2)。

《適用関係》 平成31年1月1日前に重要有形民俗文化財を国等に譲渡した場合については従前のとおりとされています(改正法附則76)。

(6) 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(住宅借入金等特別控除)(措法41)及び特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例(特定増改築等住宅借入金等特別控除)(措法41の3の2)について、これらの特例の適用を受ける際に確定申告書等に添付すべき書類の範囲に、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書に記載すべき事項を記録した電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面(電子証明書等に記録された情報の内容を、国税庁長官が定める方法によって出力することにより作成した書面をいいます。以下同じです。)が加えられました(措規18の21HS〜?、18の23の2J)。

《適用関係》 この改正は、平成32年10月1日以後に平成32年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用されます(改正措規附則18、20)。

(7) 年末調整に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(措法41の2の2)について、次の措置が講じられました。

@ 居住日の属する年分又はその翌年以後いずれかの年分の所得税につき住宅借入金等特別控除の適用を受けた個人は、年末調整の際に住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書の提出に代えて、税務署長の承認を受けている給与等の支払者に対し、当該申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができることとする(措法41の2の2C〜E、措規18の23CD)。
A 居住日の属する年分(平成31年から平成33年までの各年分に限る。以下「居住年分」という。)又は当該居住年分の翌年以後のいずれかの年分の所得税につき住宅借入金等特別控除の適用を受けた個人は、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合には、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書又は住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書の提出に代えて、これらの証明書に記載されるべき事項を電磁的方法により提供することができることとする(措法41の2の2H、措規18の23G)。
B 住宅借入金等に係る債権者は、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書の交付に代えて、住宅借入金等特別控除の適用を受けようとする個人の承諾を得て、当該証明書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができることとする(措令26の3B〜F、措規18の22D〜F)。
C 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書に添付すべき書類の範囲に、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書に記載すべき事項を記録した電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面及び住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書に記載すべき事項を記録した電子証明書に係る電磁的記録印刷書面を加える(措規18の23A)。
D 特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用を受けた個人について、上記@からCまでと同様の措置を講ずる(措法41の3の2S、措令26の4?、措規18の23の2OR)。
《適用関係》 この改正は、平成32年10月1日以後に提出する住宅借入金を有する場合の所得税額の特別控除申告書及び同日以後交付する住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書について適用されます(改正法附則78、改正措令附則17、改正措規附則19)。

(8) 消滅時効を援用せずに支払うこととされた公的年金等に対する源泉徴収の不適用(措法41の15の4)が創設され、国民年金法又は厚生年金保険法に規定する年金の支給を受ける権利の消滅時効が完成した場合において、当該権利の消滅時効を援用せずに支払われる年金については、源泉徴収を要しないこととされました(措法41の15の4@)。また、これに伴い、公的年金等に係る確定申告不要制度における全ての公的年金等が源泉徴収されていることとの要件について、当該全ての公的年金等には消滅時効を援用せずに支払うこととされた公的年金等を含まないこととされました(措法41の15の4A)。

《適用関係》 この改正は、平成30年4月1日以後に支払う公的年金等について適用されます(改正法附則82)。

(9) 電子情報処理組織による申請等(オン化省令5)について、当該申請等と併せて送信する添付書面等に係る電磁的記録(イメージデータ)に、一定の解像度及び階調の要件を付した上で、この場合における税務署長による当該添付書面等の提示等を求める措置が廃止されました(オン化省令5ACD)。

 

(10) 税務署長等が行う処分通知等について、国税庁長官が定めるものは、電子情報処理組織を使用して行うことができることとされました(オン化省令8、9)。
(注)対象となる処分通知等(所得税関係)は、平成30年国税庁告示第8号により以下のとおり定められています。

@

更正の請求に係る次の処分通知等

更正(通則法24、26)
上記イの更正に伴って行われることとなる加算税についての賦課決定(通則法32D)
更正をすべき理由がない旨の通知(通則法23C)
A 納税証明書の交付(通則法123@)
B 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書の交付(措法41の2の2G)
C 電子申請等証明書の交付(措法97)
《適用関係》 この改正は、平成32年1月1日以後に行う処分通知等について適用されます(改正オン化省令附則F)。

 

出所:国税庁

 

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