バックアップデータの保存は要件となっていますか。

バックアップデータの保存は要件となっていますか。

問18 バックアップデータの保存は要件となっていますか。

 

お疲れ様です。最近、顧客から電子帳簿保存法のバックアップデータについて質問を受けることが多いですね。


 

そうですね。特に「バックアップデータの保存は法的要件なのか」という質問をよく受けます。実際のところ、どうなんでしょうか?


 

結論から言うと、電子帳簿保存法上、バックアップデータの保存は法令要件ではありません。しかし、これは「不要」という意味ではないんです。


 

要件ではないけれど、推奨されているということでしょうか?


 

その通りです。国税庁は「望ましい」としています。主な理由は2つあります。まず1つ目は可視性の確保のためです。


 

可視性の確保とは、具体的にはどういうことですか?


 

電子データは物理的な帳簿と違って、システム障害や記録媒体の劣化で大量のデータが一度に消失するリスクがあります。例えば、ある製造業の会社でサーバーのハードディスクが故障し、7年分の電子帳簿データが全て消失してしまったケースがありました。


 

それは大変ですね。税務調査の時に帳簿が提示できないということになってしまいますね。


 

そうです。電子帳簿保存法では、保存期間中は常にデータを確認できる状態を維持する必要があります。バックアップがあれば、このような事態でも対応できます。


 

2つ目の理由は何でしょうか?


 

出力障害の回避です。特にクラウド会計ソフトを使用している場合に重要になります。


 

クラウドサービスでも問題があるのですか?


 

はい。例えば、海外サーバーを利用するクラウドサービスで、通信回線のトラブルや海外での災害により、一時的にデータにアクセスできなくなるケースがあります。実際に、ある小売業者では税務調査の際に、クラウドサービスの障害でデータ出力ができず、調査が延期になった事例もありました。


 

なるほど。では、バックアップデータはどのように保存すればよいのでしょうか?


 

法的な規定はありませんが、実務的には以下の点を考慮することが重要です。まず、複数の保存場所に分散させること。クラウドと物理媒体の両方を活用するのが効果的です。


 

具体的にはどのような方法がありますか?


 

例えば、メインデータをクラウドに保存し、月次でローカルサーバーや外付けHDDにバックアップを取る方法があります。また、重要なのは管理規則の整備です。


 

管理規則というと、どのような内容でしょうか?


 

バックアップの頻度、保存場所、責任者の明確化などです。「誰が、いつ、どこに、どのようにバックアップを取るか」を文書化しておくことが大切です。


 

顧客企業の規模によって、対応方法は変わりますか?


 

もちろんです。個人事業主なら、会計ソフトの自動バックアップ機能とUSBメモリへの月次バックアップで十分な場合が多いです。一方、中規模企業以上では、システム管理者を配置し、定期的なバックアップテストまで実施することを推奨します。


 

バックアップデータにも、検索機能や真実性の確保などの要件は適用されるのでしょうか?


 

いえ、バックアップデータは「緊急時の復旧用」という位置づけなので、電子帳簿保存法の各種要件は適用されません。ただし、メインデータが消失した場合に備えて、同じ形式で保存しておくことが実務上は安全です。


 

よく分かりました。顧客には「法的要件ではないが、リスク管理として強く推奨される」と説明すればよいですね。


 

その通りです。電子帳簿保存法の本質は「適切な記録の保存と管理」です。バックアップデータの保存は、この目的を達成するための重要な手段の一つということを理解してもらいましょう。

【回答】

バックアップデータの保存は要件となっていません。

【解説】

バックアップデータの保存については法令上の要件とはなっていませんが、電磁的記録は、記録の大量消滅に対する危険性が高く、経年変化等による記録状態の劣化等が生じるおそれがあることからすれば、保存期間中の可視性の確保という観点から、バックアップデータを保存することが望まれます。


また、必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定めるとともに、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいと考えられます。


出所:国税庁