電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面をスキャナ保存することは認められますか。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面をスキャナ保存することは認められますか。

問65 電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面をスキャナ保存することは認められますか。

 

先生、クライアントから質問があったんです。メールで受け取った請求書PDFを一度印刷して、それをスキャナで読み取って保存したいそうなんですが、これって電子帳簿保存法のスキャナ保存として認められますか?


 

それは認められないんだよ。よくある誤解なんだけど、電子取引データを紙に出力してスキャンし直すことは、法令上の保存要件を満たさないんだ。


 

えっ、そうなんですか? 紙の請求書をスキャンするのは認められるのに、どうして電子データを印刷してスキャンするのはダメなんでしょうか?


 

いい質問だね。これには明確な理由がある。まず、もともと電子データとして受け取ったものは、電子取引として扱わないといけない。電子取引の場合、電子データのまま保存することが原則なんだ。


 

なるほど。でも印刷してスキャンすれば、結果的にまた電子データになりますよね?


 

そう思うよね。でも問題は2つある。1つ目は、真実性の確保ができないこと。令和3年度の税制改正で、電子データを印刷した書面には改ざん防止措置が特に課されていないことが明確になったんだ。


 

改ざん防止措置ですか?


 

例えば、取引先からメールで10万円の請求書PDFが届いたとする。それを印刷する際に、誰かが金額を8万円に変更してから印刷することも技術的には可能だよね。印刷した書面には、元のデータと同一であることを証明する手段がないんだ。


 

あ、そうか! 元のPDFと印刷した紙が本当に同じ内容かどうか、確認できないんですね。


 

その通り。これが2つ目の理由、同一性の確保ができないという問題なんだ。他者から受領した電子データと出力した書面の同一性が十分に確保できないから、令和4年1月以降、出力書面による保存措置自体が廃止されたんだよ。


 

じゃあ、電子取引で受け取ったデータは、必ず電子データのまま保存しないといけないんですね。


 

原則はそうだね。ただし、社内経理の便宜のために印刷することは禁止されていないよ。例えば、経理担当者が内容を確認しやすいように印刷して手元に置いておくのは問題ない。


 

あ、印刷すること自体はいいんですね。


 

そう。でもそれは「法令に基づく保存」じゃなくて、あくまで「社内業務のための参考資料」という位置づけなんだ。正式な保存は、あくまで受け取った電子データそのものでやらないといけない。


 

宥恕措置とか猶予措置で認められている書面保存も、スキャンはできないんですか?


 

いい点に気づいたね。令和4年度と令和5年度の税制改正で整備された宥恕措置や猶予措置の書面も、やはりスキャナ保存の対象にはならないんだ。


 

それはどうしてですか?


 

これらの措置では、税務職員から求めがあったときに書面を提示・提出できることが要件になっている。つまり、書面として保存すること自体が求められているわけじゃなくて、「電子データ保存が間に合わない場合の暫定措置」という位置づけなんだよ。


 

なるほど。では、クライアントにはどうアドバイスすればいいでしょうか?


 

まず、メールやクラウドサービスで受け取った請求書、領収書、契約書などの電子データは、必ず電子データのまま保存するように伝えて。PDFで受け取ったらPDFのまま、検索機能を付けて保存する必要がある。


 

具体的には、どんな検索機能が必要なんですか?


 

日付、金額、取引先名で検索できるようにすることが基本だね。専用のシステムを導入するか、ファイル名を「20231215_100000円_○○株式会社」のように規則的につけて、フォルダで管理する方法もあるよ。


 

印刷した書面は、あくまで参考資料として使って、正式な保存は電子データで行うということですね。


 

完璧な理解だね。電子取引は電子データで保存、紙の書類をスキャンするのは別の話、この区別をしっかりクライアントに伝えてあげて。

【回答】

認められません。

【解説】

令和3年度の税制改正においては、電子取引の取引情報に係る電子データを出力した書面等(出力書面等)は、真実性確保のための要件(改ざん防止措置 )が特段課されておらず、他者から受領した電子データとの同一性が必ずしも十分に確保できているとは言えないことから、出力書面等による保存措置が廃止されたところです。したがって、他者から受領した電子データを書面等に出力して保存することは、電子帳簿保存法や他の税法に基づくものではありませんので、当然、その出力書面等は電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存の対象となりません。


ただし、電子帳簿保存法に従った電子データの保存が適切に行われている前提で、それとは別に各納税者が社内経理の便宜などのために書面等への出力を行うことや、スキャナで読み取るなどの処理を行うこと自体を禁止するものではありません。


(注)上記は、令和4年度税制改正における 経過措置として整備された宥恕措置や令和5年度税制改正において整備された猶予措置 を踏まえて出力されている書面についても同様です。これは、令和4年度税制改正における当該宥恕措置や令和5年度税制改正における当該猶予措置では、法令上、出力書面について税務職員の求めに応じて提示・提出できることが要件のひとつとされており、その保存は求められていないためです。


出所:国税庁