

先生、最近お客様から「会計データをクラウドサービスで管理したい」という相談が多いのですが、電子帳簿保存法的には問題ないのでしょうか?
はい、結論から言うとクラウドサービスの利用は認められています。むしろ、現在のネットワーク化や通信回線の高速化を踏まえて、法律もその現実に対応しているんです。
そうなんですね。でも、何か条件があるんでしょうか?
その通りです。まず重要なのは「速やかに出力できる」ことです。保存場所にあるパソコンとクラウドサーバが通信回線で接続されていて、いつでもディスプレイや紙に出力できる状態にあることが必要です。
具体的にはどういう状況を想定すればよいでしょうか?
例えば、東京の事務所でFX2マイスタークラウドなどのTKCシステムやfreee、マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを使っているケースを考えてください。データは各社のサーバに保存されていますが、事務所のパソコンからいつでもアクセスして帳簿を確認し、印刷できますよね?これが「速やかに出力できる状態」です。
なるほど。ところで、海外にサーバがある場合はどうなんでしょうか?
海外サーバも同様に認められています。重要なのはサーバの場所ではなく、日本国内の納税地から「整然とした形式で明瞭な状態」で出力できるかどうかです。
「整然とした形式で明瞭な状態」とは?
簡単に言えば、きちんと読める状態で出力できるということです。スキャン文書の場合は、4ポイントの文字まで認識できる解像度で出力できることも求められます。これは紙の帳簿書類が手元にあるのと同じ状態を確保するためです。
実際の運用で注意すべき点はありますか?
バックアップの重要性ですね。法令上の義務ではありませんが、通信トラブルで出力できなくなるリスクを避けるため、バックアップデータの保存を強く推奨します。また、電磁的記録の保存責任者を定めて、管理規則を作成することも望ましいとされています。
お客様への説明では、どんな点を強調すればよいでしょうか?
「クラウドも海外サーバも使えますが、いつでも速やかに出力できる環境を整えておくことが大切」ということを伝えてください。そして、万が一に備えてバックアップ体制もしっかり整えるよう助言しましょう。
分かりました。これで安心してお客様にクラウド会計の導入を提案できます。
そうですね。電子帳簿保存法は時代に合わせて柔軟になっていますから、適切な要件を満たしていれば、最新のITサービスを活用して業務効率化を図ることができますよ。
規則第2条第6項第4号に規定する保存をする場所(以下「保存場所」といいます。)に備え付けられている電子計算機とサーバとが通信回線で接続されているなどにより、保存場所において電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、規則第2条第6項第4号イからニまでに規定する状態で速やかに出力することができるときは、クラウドサービスを利用する場合や、サーバを海外に置いている場合であっても、当該電磁的記録は保存場所に保存等がされているものとして取り扱われます。
近年、コンピュータのネットワーク化が進展する中、通信回線のデータ送信の高速化も進み、コンピュータ間でデータの送受信が瞬時にできる状況となっていますが、電子帳簿保存法の趣旨(法第1条)を踏まえ、保存場所に備え付けられている電子計算機と国税関係帳簿書類の作成に使用する電子計算機とが通信回線で接続されていることなどにより、保存場所において電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、それぞれの要件に従って、速やかに出力することができるときは、当該電磁的記録は保存場所に保存等がされているものとして取り扱われます(取扱通達4−7注書き)。
そして、現在、企業が会計処理をはじめとする業務処理を外部委託する場合には、受託企業の大半が国内外の複数の場所にあるコンピュータをネットワーク化してデータ処理し、国内外のサーバにデータを保存している状況となっていますが、前述の点を踏まえれば、仮に電磁的記録が海外にあるサーバに保存されている場合(保存時に満たすべき要件を満たしている場合に限ります。)であっても、納税地にある電子計算機において電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、かつ、スキャン文書の場合は、さらに、拡大又は縮小及び4ポイントの文字が認識することができる状態で速やかに出力することができる等、紙ベースの帳簿書類が納税地に保存されているのと同様の状態にあれば、納税地に保存等がされているものとして取り扱われます。
なお、バックアップデータの保存については、法令上の要件とはなっていませんが、通信回線のトラブル等による出力障害を回避するという観点からバックアップデータを保存することが望まれます。
出所:国税庁
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