

先生、電子帳簿保存法のスキャナ保存について質問があります。入力期間内にスキャニング作業を終えていれば大丈夫ですよね?
それが、実はそうではないんです。よくある勘違いなんですが、単にスキャンしただけでは要件を満たしていないんですよ。
え、そうなんですか?では何が必要なんでしょうか?
入力期間内には、スキャンした電磁的記録に対して、次のどちらかの処理を完了させておく必要があります。一つ目は「タイムスタンプを付与した状態」にすること、二つ目は「訂正・削除履歴が確認できるシステムに格納した状態」にすることです。
つまり、スキャンしてデータ化するだけでなく、タイムスタンプを押すか、履歴管理システムに保存するところまで必要なんですね。
その通りです。この要件の趣旨は、電磁的記録の真実性を確保することにあります。紙の書類を受け取ったら、できるだけ早く電子化することで、紙の段階での改ざんリスクを減らすんです。
確かに、後から「いつでも好きなタイミングでスキャンすればいい」となると、その間に紙の書類を書き換えることもできてしまいますね。
まさにそういうことです。そして、タイムスタンプを付与することで、電子化した後の改ざんも防ぐ仕組みになっています。
具体的な事例で教えていただけますか?例えば、7月20日に請求書を受け取った場合はどうなりますか?
良い質問ですね。重要書類の場合、受領後おおむね7営業日以内に入力する必要があります。7月20日に受け取ったら、7月30日頃までにスキャンしてタイムスタンプを付与するか、履歴管理システムに格納しなければなりません。
7月30日にスキャンだけして、タイムスタンプは8月に入ってから付与した、というのはダメなんですね。
その通りです。それでは要件を満たしていません。入力期間内に一連の処理を完了させる必要があります。
タイムスタンプの代わりになる方法もあると聞いたんですが。
よく勉強されていますね。令和3年度の税制改正で、訂正・削除の履歴が確認できるシステムを使う場合、そのシステム自体が入力日時を記録してくれていれば、タイムスタンプの付与に代えることができるようになりました。
クラウドシステムなどですね。
はい。例えば、クラウドサーバに客観的な時刻証明機能があって、いつアップロードしたかが記録される仕組みであれば、それが入力期間内であることを証明できます。この場合、別途タイムスタンプを付与する必要はありません。
入力期間内には、検索機能の設定や帳簿との関連付けも必要ですか?
良い質問です。それらは「入力」には含まれません。検索機能の確保や帳簿との相互関連性は、原則として電磁的記録を保存するまでに整えればよいとされています。
ただし、保存時点で帳簿がまだ作成されていない場合もありますよね。
その場合は、決算終了後遅滞なく対応すれば認められます。ただし、入力期間内のタイムスタンプや履歴システムへの格納は必須ですから、そこを混同しないように注意してください。
整理すると、入力期間内には「スキャン+タイムスタンプ付与」または「スキャン+履歴管理システムへの格納」まで完了させる。検索機能や帳簿連携は保存時または決算後でもよい、ということですね。
完璧です。実務では、スキャン作業とタイムスタンプ付与をセットで行うワークフローを確立することが重要ですよ。「スキャンしたから後でタイムスタンプを押せばいい」という運用では、うっかり期限を過ぎてしまうリスクがあります。
システムの選定時にも、この要件を満たせるかどうか確認が必要ですね。
その通りです。電子帳簿保存法の要件は複雑ですが、一つ一つ確実に理解して対応していきましょう。
単にスキャニング作業を終えていればよいのではなく、入力期間内に、スキャニングした国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された状態又はその後の当該電磁的記録の記録事項に係る訂正又は削除の履歴等を確認することができる システム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含みます。)に格納した状態にしなければなりません。
規則第2条第6項第1号では、国税関係書類に係る記録事項の入力を一定期間内に行うこととされています。これは、国税関係書類の受領等後できるだけ早く電磁的記録にすることによって紙の段階における改ざんの可能性を低くし、タイムスタンプを付した電磁的記録については、電磁的記録における改ざんを防ぐことができるため、当該国税関係書類に係る電磁的記録の真実性を確保する目的から設けられているものです。
したがって、このような趣旨から入力期間内に、単にスキャニング作業が終えていればよいのではなく、電磁的記録の真実性を確保するため の同項第2号に規定するタイムスタンプを付し、その後の当該電磁的記録の訂正又は削除の履歴が確保された状態にする必要があります。また、令和3年度の税制改正により、電磁的記録の記録事項に係る訂正又は削除の履歴等を確認することができるシステム (訂正又は削除を行うことができないシステムを含みます。 に入力期間内に電磁的記録を保存したことが確認できる場合については、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えることができることとされましたが、この入力期間内に保存したことが確認できる場合とは、例えば、他者が提供するクラウド サーバ(同号ハに掲げる電子計算機処理システムの要件を満たすものに限ります。)により保存を行い、当該クラウドサーバがNTP Network Time Protocol サーバと同期するなどにより、その国税関係書類に係る記録事項の入力がその作成又は受領後、速やかに行われたこと(その国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合にあってはその国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行われたこと)の確認ができるようにその保存日時の証明が客観的に担保されている場合が該当します(取扱通達4ー26。)
(注)帳簿との相互関連性の確保 (重要書類及び過去分重要書類に限ります。)及び検索機能の確保は当該電磁的記録の入力に含まれないことから、原則として当該電磁的記録を保存するまでに確保しなければなりませんが、国税関係書類の保存時点で帳簿が作成されていない場合には、決算終了後遅滞なくこれらの要件を満たしていれば認められます。
出所:国税庁
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