

先生、電子帳簿保存法のタイムスタンプについてお聞きしたいんですが、「一の入力単位ごと」に付すって決まってますよね。でも、書類種別や部署ごとにまとめて付けてもいいんでしょうか?
いい質問ですね。結論から言うと、一定の条件を満たせば、まとめて付与することも可能なんですよ。
えっ、そうなんですか!てっきり1枚1枚にタイムスタンプを付けないといけないのかと…
原則は確かに「一の入力単位ごと」です。でも、タイムスタンプが「一の入力単位ごとに検証できる」状態であれば、まとめて付与しても大丈夫なんです。
検証できる状態、というのはどういうことですか?
通常、複数のファイルをまとめてタイムスタンプを付けると、1つのファイルが改ざんされた時に、どのファイルが改ざんされたか特定できなくなりますよね。
ああ、全体でしか確認できないということですか。
その通り。でも「単ファイルのハッシュ値を束ねて階層化した上でまとめてタイムスタンプを付す技術」を使えば、個別のファイルごとに検証できるんです。
ハッシュ値を階層化…?具体的にはどういう仕組みなんでしょう?
例えば、営業部で1日に100枚の請求書をスキャンしたとしましょう。各ファイルからハッシュ値という「指紋」のようなものを作って、それらを束ねて階層構造にするんです。最終的に1つのタイムスタンプを付けても、どのファイルが改ざんされたか個別に検証できる仕組みです。
なるほど!それなら実質的には1枚1枚にタイムスタンプを付けているのと同じということですね。
まさにその通り。だから書類種別ごと、例えば「請求書」「領収書」でまとめたり、部署ごとに「営業部」「経理部」でまとめてタイムスタンプを付与しても問題ないんです。
コスト面でもだいぶ効率的になりますね!でも、使うタイムスタンプには何か条件があるんですか?
はい。総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプでなければなりません。これには2つの要件があります。
どんな要件ですか?
1つ目は、記録事項が変更されていないことを、保存期間を通じて確認できること。2つ目は、課税期間中の任意の期間を指定して、その期間内のタイムスタンプを一括検証できることです。
税務調査の時に、調査官が「この期間のデータを確認したい」と言われた場合でも、すぐに対応できるということですね。
その通りです。例えば「2024年4月から6月までの請求書」といった指定があれば、その期間のタイムスタンプをまとめて検証できる必要があります。
実際の運用では、どういうケースが多いんでしょう?
例えば、日次でスキャン作業をしている企業なら、毎日の終業時に部署ごとにまとめてタイムスタンプを付与するケースが多いですね。「経理部_2024年10月14日_請求書」というように整理して保存します。
月次でまとめて処理する企業もありますか?
ありますよ。ただし電帳法では、最長で「その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」タイムスタンプを付す必要があります。実務上は2ヶ月とおおむね7営業日以内が目安です。
じゃあ、まとめて付与する場合でも、そのルールは守らないとダメですね。
まさに。そして重要なのは、自社が使っているシステムやサービスが、この「階層化技術」に対応しているかどうかを確認することです。
対応していないシステムだと、やっぱり1枚ずつ付けるしかないんですか?
その場合は個別付与になりますね。ただ、最近の電子帳簿保存法対応システムは、ほとんどがまとめ付与に対応していますよ。導入前にベンダーに確認するといいでしょう。
わかりました!技術的に個別検証ができれば、効率的にまとめて付与できるということですね。
はい。コストと運用の効率化を考えると、まとめ付与は有効な選択肢です。ただし、検証可能性を確保することが大前提ですから、そこは忘れないでくださいね。
承知しました!クライアントに説明する時も、この点をしっかりお伝えします。
まとめてタイムスタンプを付しても差し支えありません。
規則第2条第6項第2号ロ(タイムスタンプ)の規定によれば、「一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に、総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプを付すこと」とされています。
このタイムスタンプを付す方法については、@一の入力単位である単ファイルごとにタイムスタンプを付す方法及びA複数ファイルにまとめてタイムスタンプを付す方法が考えられます。
上記Aの方法の改ざんの検証については、通常、複数ファイルのうち1つの単ファイルが改ざんされた場合には、その複数ファイルのうち改ざんされた単ファイルのみを検証することができないため、その複数ファイルの全体について、変更されていないことの確認ができなくなります。
しかしながら、上記Aの方法の改ざんの検証については、単ファイルのハッシュ値を束ねて階層化した上でまとめてタイムスタンプを付す技術を使用する方法によりタイムスタンプを付した場合には、改ざんされた単ファイルのみを検証することができ、また、このような方法であれば、一の入力単位である単ファイルごとにその単ファイルのハッシュ値を通じてタイムスタンプを付している状態となり、実質的には「一の入力単位ごと」にタイムスタンプを付しているものと解することができます。
したがって、この方法であれば、まとめてタイムスタンプを付しても差し支えありません。
出所:国税庁
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